チュニジア現地レポート(第19回):チュニジアの主要な行事(2022年1~4月):文化・食生活編
こちらの記事は、チュニジアやアラブ圏の文化や生活に関心のある方にお伝えしたい情報です。
2022年8月開催予定のアフリカ開発会議(TICAD8)開催国であるチュニジア。
弊社スタッフSが、チュニジア北部・南部両方での居住経験をもとに、工業・人材・食・生活・美容など、多種多様なチュニジアの魅力を様々な角度からご紹介していきます。
今回の記事では、チュニジアで2022年1月から4月にかけて行われた主要な行事や、同期間に報道された文化や食生活に関する情報についてご紹介します。
1. 2022年1月~4月の祝祭日(3月16日は伝統服の日、3月20日は独立記念日、4月9日は殉教者の日)
毎年チュニジアでは日本ほど新年は祝われませんが、元旦は祝日として制定され、2日からは通常出勤となります。しかし新年の前日である大晦日は、チキンローストやケーキを食べる家庭が多いです。ケーキ屋はその2週間前から予約を受け付け、繁忙期となります。
同国には祝日には制定されていませんが、3月16日は伝統服の日として広く国民に認識されています。チュニジア人にとって伝統服を身に着ける機会は結婚式くらいで少ないです。そのため、近年学校行事の1つとして、幼稚園や小学校で男女ともに伝統服に親しむ行事が催されています。
伝統服は地域によっても様々です。その中でも、サフサーリは、綿や絹からできた四角い布の手触りの良い女性用の羽織りもので、アンダルシア人がマグレブ地域に持ち帰ったと言われ、現在でもお年寄りや、アルジェリア国内でも日常的に羽織られている姿が見受けられます。ぜひチュニジアの伝統服の地域性にも着目して見てくださいね。
3月20日は独立記念日です。1960年は、アフリカで主にフランス語圏17カ国が旧宗主国の支配から次々と独立し、「アフリカの年」と呼ばれた時代です。チュニジアはその前段階の1956年3月20日に独立を果たしました。
4月9日は殉教者の日で、第二次世界大戦勃発の前年の1938年にフランスに抵抗し、殉死した人々がおり、同国では祝日として制定しています。
2. チュニジアのラマダン月の開始は2022年4月2日(ヒジュラ暦1443年9月1日)。伝統パンと伝統菓子の消費月間
今年もラマダン月が始まり5月頭に終えました。以前の記事 で、断食月間は伝統菓子が消費されることを紹介しました。その中でも今回紹介したいのはクラーウィシュ です。モロッコではシャバキーヤ と呼ばれる菓子で、スペインのペスティーニョ と呼ばれる伝統菓子の起源とも言われています。スペイン南部には、かつてアラブ人がアンダルシアへ広めた菓子 がルーツのものが多いと言われています。ペスティーニョは、スペインではイースターやクリスマスに食べられるとのことで、チュニジアでも聖なる月であるラマダン月に食され、個人的には宗教行事で食するという共通性を感じます。
日本にもイベリア半島から南蛮貿易で伝来したとも言われる“かりんとう”がありますが、チュニジアにも見た目が似ている菓子が多くあります。カルンガゼル(ガゼルの角) はタタウィン県発祥、ムハーリク はベジャ県で有名です。日本のかりんとうと似ていませんか。また特徴的な形のジラービア は1300年ほど前のウマイヤ朝時代の菓子で、チュニジアを含め多くの国で現在でも食べられています。
また、チュニジア人は毎食バゲットを食しますが、ラマダン月では伝統的な丸パンが多く出回ります。主に3種類の丸パンがあり、ムバッサスパン、タブーナパン 、タジーンパン と見た目は似ていますが、食感が異なります。
上述のとおり伝統菓子や伝統パン作りに小麦製品が使用されますが、同国では、小麦粉はもちろん“セモリナ粉”が併用されています。クスクスの原料にもセモリナ粉が使用されていますし、隣国イタリア料理のピザ作りやパスタにも使用され、セモリナ粉は古くから地中海諸国で使用されています。
3. チュニジアの食生活と健康:インスリンの国内製造とオーガニック食品
最後に、チュニジアの食生活と健康に関連する話題です。3月に、チュニジアの製薬会社MédiSは、アフリカ圏とアラブ圏で初めて、インスリン「GLANGEN」の国内製造に成功しました。輸入品よりも安価な価格帯で、糖尿病患者が多い国内の需要が見込まれます。チュニジア人は、日常的にコーヒーを飲む国民ですが、ブラックではなく、砂糖を多量に入れるため、中高年になり糖尿病と診断され、医者から砂糖の摂取を控えるように処方されるケースも目立ちます。また伝統菓子にも糖分や油分が多く含まれています。
こういった糖尿病をはじめとした非感染症疾患(NCDs)の患者増大で、国内では健康に意識し始めた所得に余裕のあるチュニジア人向けに、カロリーゼロの砂糖や全粒粉のパスタやマカロニ、全粒粉クスクスやバゲットなどが販売されています。また豆乳やビスケットなどスペインやイタリア、フランスから輸入されたオーガニック食品も市場に出回っています。
日本では豆乳は一般的な飲料品ですが、チュニジアでは、流通はしているものの、まだまだ希少価値の高いものとなります。ただ大豆ではないですが、豆類は食されています。例えばラマダン明けの小イード初日には、地域によって必ず食べられる一品があり、ガフサ県とトズール県一帯ではイード前夜に煮込まれたクミン等をまぶしたソラマメ料理が食されます。
今回は、2022年1月~4月に開催された行事について紹介しました。チュニジアの伝統菓子や伝統パンの街として、カイラウェーン(ケロアン)県は名高く、北アフリカで初めて、街及びモスクが建立された地でもあります。また同国ではカイラウェーンを通過する際には、同県発祥の菓子マクルードを買って帰るという習慣があります。チュニジアの料理でもあるケフタジはカイラウェーン発祥と言われグルメの街としても名高いです。
4月はアカシア(ミモザ)が咲き、春の街路樹はきれいです。しかし、私はチュニジアで花粉症を発症しました。花粉症の方は十分な対策をされてくださいね。