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チュニジア現地レポート(第18回):チュニジアのフラワーウォーターとエッセンシャルオイル

こちらの記事は、チュニジアやアラブ圏の美容製品に関心がある方々にお伝えしたい情報です。

2022年8月開催予定のアフリカ開発会議(TICAD8)開催国であるチュニジア。
弊社スタッフSが、チュニジア北部・南部両方での居住経験をもとに、工業・人材・食・生活・美容など、多種多様なチュニジアの魅力を様々な角度からご紹介していきます。
今回の記事では、チュニジアで生産され、広く使われているフラワーウォーター(花の蒸留水)とエッセンシャルオイル(精油)についてご紹介します。

1. バラ精油と副産物ローズウォーター(バラ水、マーワラド)

チュニジアのスーパーではローズウォーターを手軽に購入することができます。チュニジアでは、マーワラド(バラの水)と言われ、料理や菓子作りなどに使用されます。ローズウォーターは、イランやトルコなどチュニジアを含め様々な地域で製造されていますし、国内市場でも100%純粋ではない物も含め、出回っています。

ローズウォーターはバラの花を蒸留して作られる液体(水)です。ローズウォーターの起源はイランとも言われ、古代から様々な宗教の儀式に使われていました。このローズウォーターは、精油(エッセンシャルオイル)である“バラ油(ローズオイル)”を製造蒸留する際に出てくる副産物です。

バラの花にも数多くの種類があり、その中でも有名な種はダマスクローズで、生産地としてトルコやイラン、ブルガリアなど数多くの国があります。他のバラの種類で、ローズ・ド・メ(5月のバラ)があり、ダマスクローズとアルバローズとの交雑種とされており、南仏で栽培されています。サウジアラビアでもバラの精油作りが行われおり、チュニジアでもローズウォーターやバラ精油の入った有名ブランドの香水やハンドクリーム等が手に入ります。

※チュニジアのザグワーン(ザグアン)県には、ニスリ―ンと呼ばれるバラの花から蒸留された、ニスリーンウォーターがあります。同県は、カーカワラカ(Kaak Warka)と呼ばれるアンダルシア人が持ち帰ったとされる伝統菓子が有名で、ローズウォーターの代わりにニスリーンウォーターを使う習慣があります。

2. ネロリ精油(ロウフ ザハル)と副産物オレンジフラワーウォーター(オレンジ花水、マーザハル)

チュニジアの北部に位置するナブール県は、ワイン製造におけるブドウの生産やかんきつ類、陶器の生産県としても知られ、朝の出勤時間帯は、ナブール県から首都へ向かう多くの車で、道が渋滞しています。

同県はビターオレンジの花びらの収穫地としても名高いです。ビターオレンジはその名の通り、苦いオレンジです。オレンジフラワーウォーターは、チュニジアではマーザハル(花の水)と呼び、ビターオレンジの花が開花する3~4月頃に、実になる前の花びらを摘んだものを蒸留し、古くから家庭で熱中症、胃腸の痛み、肌のマスク、美容で使用されていました。またコーヒーやケーキや伝統菓子にも数滴加えられ、香り付けとしてもローズウォーターと同じ用途で使われています。

実はこのビターオレンジの花からは、世界的に有名なエッセンシャルオイル(精油)のネロリができ、名立たる香水ブランドにも精油ネロリが含まれています。このネロリを抽出する際に出る、大量の副産物がオレンジフラワーウォーターです。世界ではイタリアのネロラ王妃から由来する、ネロリの呼び名として有名ですがチュニジアではロウフザハル(花の魂)と呼ばれ、少量で高額ですが、国内市場でも出回っており、オレンジフラワーウォーターと同様の用途で使用されています。ビターオレンジの花びら1トンで約1㎏のネロリ(ロウフザハル)、600ℓのオレンジフラワーウォーター(マーザハル)が抽出されます。

ネロリ精油の原料は北アフリカが主な主産地でモロッコやエジプトのものもあります。地中海の反対側のフランスの香水企業ゲランはナブール県からのビターオレンジの精油を使用していますし、日本で出回っている香水にもチュニジアのネロリ精油が使用されているかもしれませんね。

3. 日本のビターオレンジである橙(ダイダイ)、スペインのビターオレンジであるセビルオレンジ

全く同じ種類ではないものの、日本でも、橙(ダイダイ)と呼ばれるビターオレンジがあり、和歌山県や静岡県は日本有数の産地で、熱海市の特産品にもなっています。ダイダイは中国を経由して伝わったと言われ、正月用の飾りからポン酢の加工へと変遷し、現在、和歌山県はだいだいの生産量一位となっています。両県では、料理用のダイダイポン酢も製造されています。

また、スペインにもセビルオレンジと呼ばれるビターオレンジがあります。スペインのセルビアの街路樹に実っており、このビターオレンジは、マグレブ地域からのムーア人(アマジグ人とアラブ人)がスペインにもたらしたと言われています。果実は苦く食用に適さないため、道端に落ちっぱなしですが、ママレードの原料としてもイギリスへ輸出されており、近年ではクリーンエネルギーとしての活用も期待されています。

チュニジアでは、食用としても、数多くの種類のみかんが1月頃から出回り、その数は40種ほどと言われています。家庭では生絞りジュースやジャムを作る習慣もあります。チュニジアで製造された、甘いミカンをはじめとしたかんきつ類やハーブなどのエッセンシャルオイルも販売されていますので、ぜひ試してみてくださいね!


今回はチュニジアのフラワーウォーターとエッセンシャルオイルについて紹介しました。上述の通りチュニジアは花の蒸留文化が昔から根付いています。

蒸留工法は様々な場面で使用され、花の蒸留以外にも、焼酎、ウォッカ、ウィスキーなどの蒸留酒作りにおいても使用されます。イスラム教徒の多い東地中海でも、昔からアラク(Arak)と呼ばれる蒸留酒が作られていました。この蒸留酒はぶどうを蒸留しアニスの種で香りをつけしたものです。

蒸留作りに使用される蒸留機「アランビック」はギリシャ語からアラビア語の「アルインビーク」へ、アルコールは元々アラビア語の「アル・コホール」から由来し、古代のアラブ世界では薬品としても使用され、錬金術師によって、メソポタミア時代から伝わった“蒸留”工法が発達されたといわれています。

チュニジアには、花の蒸留水だけでなく、イチジクの蒸留酒「ブッハ」もありますので、是非味見してみてくださいね!

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