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BtoBビジネスの海外展開 第1章:基礎編(3)自社に最適な対象国・市場選定のポイント

海外展開支援コンサルタントの杉田昌也です。
私は海外企業との直接的な取引や業務提携が必要なBtoBビジネス(日本企業~海外企業間でのビジネス)やBtoBtoCビジネス(日本企業と海外企業との取引や提携を経て海外顧客と行うビジネス)の実現をお手伝いしています。

本ブログでは、海外展開を目指すBtoB(BtoBtoCを含む)ビジネスの経営者様を対象に、海外向けビジネスモデルの考え方や、具体的な準備と検討の方法、成功に向けたポイント、活用すべき支援制度などの参考情報をシリーズで紹介しています。

前回の記事では、BtoBビジネスの海外展開の成功に向けて、業種を問わず重要となる5つの基本戦略について解説しました。
今回の記事では、基本戦略その1「自社に最適な対象国・市場選定」を進めるための3つのステップについて、より具体的に掘り下げます。

1.自社製品・サービスの展開可能性がある候補国(10~20か国)のリスト化

国内・海外を問わず、対象とする市場に「自社製品・サービスを必要とする顧客がいること」が、ビジネスが成り立つ上での大前提です。このような顧客がいると想定される国を、以下のような点に注目しながら探していきます。

・日本の顧客と同様の課題を抱えている
(例:地震対策の製品や技術が必要とされる国、台風や洪水の対策が必要とされる国 など)
・日本の顧客と同じ産業が一定程度発達している
(例:自動車、半導体、家電など特定分野の製造業や裾野産業が発達している国 など)
・日本の顧客と共通する趣味や嗜好を確認できる
(例:現地で日本食チェーン店が繁盛している国 など)
・自社製品・サービスが該当する産業を、その国の政府が支援している
(例:再エネ・省エネ・リサイクル技術、スマート農業、フィンテック、ヘルステック等に関連した産業を政策的に支援している国 など)

また、一部の国や分野に限られますが、日本から開発途上国への国際援助を行うJICA(国際協力機構)のWEBサイトでは、海外各国が日本に対して期待する、自国の社会課題解決のために必要な技術や製品に関するデータベースがあります。

民間企業の製品・技術の活用が期待される開発途上国の課題

このデータベースには、各国の政府関係者が解決したい自国の社会課題と、その解決に貢献し得る製品や技術が具体的に記載されており、製品・サービスのニーズを裏付ける貴重な現地の声として参照できます。

これらを含めた様々な情報に基づいて候補国をリスト化していきますが、その際、有望国を早い段階で見落とすことのないよう、まずは幅広く10~20か国程度をリストアップすることをおすすめします。

2.特に有望な進出候補国(3~5か国)への絞り込み

次に、リスト化した国々の社会、経済、政治等の基本情報を確認します。具体的には、対象国の人口や経済などの基本統計(人口数、人口増加率、一人あたりGDP、GDP成長率など)や、自社製品・サービスが該当する分野への規制や投資優遇の施策、政治的な安定性、日本との距離、周辺国も含めた経済圏(例えばASEAN等)でみた拠点性などに着目します。

これらの情報の多くは一般公開されており、各国の社会や政治等の基本情報は外務省が、主要国の経済やビジネスに関する基本情報がJETROがWEB上で公開していますので、無料で収集できる情報をフルに活用しましょう。特に、JETROのWEBサイトでは各国における海外直接投資の優遇政策や外資規制、貿易上の留意点など、ビジネスに直接関連する情報が多数掲載されています。
参考として、私がよく情報収集に使っている公的機関のWEBサイトを記載しておきます。

外務省:国・地域情報 
JETRO:国・地域別に見る 
世界銀行:World Bank Open Data 
世界銀行:Doingbusiness ※2020年で休止 
国連:SDG Global Database 

これらの情報に基づいて、対象国に一定の市場規模が見込まれるかどうかや、成長性があるか、一定の購買力があるか、自社製品・サービスが該当する産業への外資規制がないか、規制がある場合の参入条件は何か、対象国だけでなく周辺国も含めた経済圏全体でのポテンシャルはあるか等の観点から、3~5カ国の進出候補国に絞り込みます。

3.最初の1か国の選定と進出計画の検討

少数の進出候補国に絞り込んだ後は、それらの国についてより具体的で、より顧客や現場に近い情報を、量的な情報と質的な情報の双方について収集します。例えば、以下のような情報を集めて、客観的な分析ができると、最も有望な1カ国を選定し、その国への進出計画を練る上で非常に有益です。

・自社との協業や提携の可能性がある複数の現地企業の特徴や長所、課題
・すでに現地に進出済みで、自社と競合するライバル企業のビジネスの現状と将来見通し
・自社と競合するライバル企業の業界内でのポジショニングとマーケティング手法
・現地の見込み顧客が自社に期待する(であろう)製品・サービスの利点
・現地の見込み顧客による購買行動に関連して留意が必要な価値観や商慣習、宗教面での配慮 など

2.で述べた人口や経済等の統計情報等と異なり、これらの情報の多くは定性的、かつ現地に強く紐づいた情報であり、自社の力だけで収集するのには限界があります。このため、これらの情報収集にあたっては、網羅的な情報収集と客観的な分析を得意とする市場調査の専門家のサポートを受けるとともに、現地での協業や提携の相手となり得る企業との信頼関係をつくり、現地の生の情報を提供してもらえる体制を早い段階で作ることが重要となります。

現場に近いこれらの情報を広く収集・分析した上で、最も有望と思われる1カ国を内定しつつ、具体的な事業計画や進出手順を検討するステップに移ります。事業計画の検討にあたっては、対象とする市場でのポジショニングと価格設定、販売チャネル、プロモーション戦略など等の仮説が立てられている必要がある他、事業化および事業の継続的運営に要するコスト面の試算と、事業化開始から5~7年後を目処とした収支計画、キャッシュフロー計画、人材計画、資金調達計画と、現地進出への段階的な手順等を一体的に検討していく必要があります。

事業計画に紐づく各要素は密接に関連しており、全体として一貫した事業計画を形成する必要がありますが、いずれの要素も詳細な検討には専門的な知見が不可欠です。特に、はじめて海外向けの事業計画をつくる場合は、海外事業計画の専門家のサポートを得て取り組むことを強くおすすめします。

次回の記事では、基本戦略その2「複数の切り口から市場調査を行う」際の具体的なステップについて解説します。


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