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チュニジア現地レポート(第15回):チュニジア地方部の魅力(北西部編)~豊かな自然と古代遺跡(ジェンドューバ県、ベジャ県、エルケフ県、シリアナ県)

こちらの記事は、チュニジアの文化や観光、特産品などに関心を持つ方にお伝えしたい情報です。

以前のブログで、チュニジア北西部は、国内で唯一、雪景色を楽しむことができ、北西内陸部はローマ時代より穀倉地帯で、同国の主食の原料である小麦粉の生産で知られていることを紹介しました。

それだけでなく、実は北西部は先史の時代の古代遺跡も数多く眠っている場所でもあります。
チュニジアでは北西部と言えば、ジェンドューバ県、ベジャ県、エルケフ県、シリアナ県の4県を指します。
今回は、その中でも個人的に特に興味深かった地域のモノについて掘り下げていきたいと思います。

1. 赤いサンゴ礁の宝石の生産地であるジェンドューバ県タバルカ

ジェンドューバ県のタバルカは、宝石に利用される赤いサンゴ礁の生産地として知られています。地中海地域では、ギリシャ神話に登場するメドューサが斬首された際の血が、赤いサンゴ礁となったという伝説もある程です。

また地中海地域では古くから宝石に使用されており、現在でも赤いサンゴ礁は、国際市場において、高値で取引されています。その生産量、世界トップは、アルジェリアの地中海沿岸アンナーバ県とアッターリフ県カーラの2県にまたがる地域、次いでチュニジアのジェンドューバ県タバルカ産です。

チュニジア農水省によれば、赤いサンゴ礁の国内生産量はタバルカ、次いでビゼルトです。また、イスラム教徒は礼拝用ツールとして、”ミスバハ“(仏教で使用する数珠に似たもの)を使用しますが、赤いサンゴ礁のミスバハは大変高価です。

サンゴ礁は海の生態系を守る役割もありますが、近年、乱獲によりサンゴ礁産地の数か減少しています。このため生産量トップのアルジェリア政府は漁獲を禁止する措置を2005~2015に出したほどです。チュニジアと近いイタリアのサルディーニャ島でも乱獲の影響から、環境保護の取り組みが行われています。

こうした中、チュニジア政府も、地中海のサンゴ礁の生産諸国やFAOと連携し、サンゴ礁の保護に取り組んでいます。

赤いサンゴ礁の宝石の加工地として有名なのは、イタリアのナポリ県Torre del Grecoでサンゴ博物館もあり、サンゴ細工で有名な街です。チュニジアの赤いサンゴ礁もイタリア国内に持ち込まれ完成品の宝石となって世界に輸出されていると言われています。

実は日本でもサンゴ礁の宝石は作られており、高知県はサンゴ礁の宝石の特産地です。地元企業によれば、国内での認知度は低く、若手の職人育成に力を入れ、高知ブランドとして“血赤珊瑚”を、世界へ向けて発信しているとのことです。

2. アンダルシアの面影が残るベジャ県タストュール

711年に、イベリア半島において、マグレブ地域及び中東から侵略したイスラム教徒により、後ウマイヤ朝が756年に建立された後、700年あまり続いたキリスト教徒によるレコンキスタ(再征服)で1492年にナスル朝のグラナダが陥落しました。

その後、現スペイン南部アンダルシア地方から、キリスト教に改宗しなかった多くのアンダルシア人がマグレブ地域に逃れ、ここチュニジアにも1609年にアンダルシア人が移り住みました。

ベジャ県南部のタストュール市は、アンダルシア人がチュニジア国内に移り住んだ約20の街の中でも、最も大きい街です。

同市には、400年の時を超えてアンダルシア地方と共通するレンガ屋根等の佇まいを垣間見ることもできます。

さらに興味深いのは、街の時計はアンダルシアのある西側を指すように、反時計回りにまわっています。スペインはヤギ乳の伝統的なチーズも存在しますが、ここタストュールにも、国内の他地域に比べ、数十種類のチーズを販売する“普通の商店”が存在し、一味違うと言われています。

また街には年に1回ザクロ祭りが開催されます。スペイン語でザクロはグラナダと言い、関係があるのかもしれませんね。

チュニジアでのアンダルシアの影響は、バルガ(履物)や結婚式などに着用される、きらびやかな刺繍や装飾が施された伝統衣装は、その影響を受けたとも言われています。

※同国農業省によれば、ザクロの全国の生産量1位は南部沿岸ガベス県、次いでベジャ県です。ザクロは10月頃から、各地で出回り始めます。チュニジア人でも好みが分かれるところですが、この時期は“マスフーフ”(ザクロ入りのクスクス)が食卓に現れます。

3. 海と山と川に恵まれ、様々なアクティビティができる北西部

北西部は、多様な地形に恵まれていることから、様々なアクティビティができる自然豊かな地域として国内外から観光客も訪れています。

ジェンドューバ県のタバルカはスキューバダイビングアインドラハムはハイキングの場所で有名です。エルケフ県では古代遺跡のヨグルタを背景にマラソン大会が開催されています。

同国北東部ナーブル県や中西部ガスリーン県も緑豊かですが、とりわけ北西部一帯は自然が豊かであると言えます。野生のイノシシも生息し、ジェンドューバ県のファーイジャ国立公園には鹿が生息しています。

シリアナ県南部のキスラ市は、2000年以上前から国内で“人が居住する場所”として、最も古く、最も標高の高い村(1174 m)と言われています。また、北西部は降雪地帯で、日本の東北部でみられるような雪かきをする姿も見られます。

2019年ジェンドューバ県では降雪による停電、死者が出るなど、日常生活に支障をきたす事態が起きました。さらに、北西部はモロッコから連なるアトラス山脈の最東端に位置し、同山脈の広がるアルジェリアのスークアフラース県を源流とする巨大な国際河川メジェルタ川が、北西部を経由して、下流のチュニジア首都圏へ流れています。

こうした北西部の水の恵みは農業を豊かにする一方で、ジェンドーバ県は洪水が多いことで有名で、農作物に被害を及ぼしています。またメジェルタ川の氾濫は下流の人口の集中する都市部にも、深刻な洪水被害を及ぼしています。

ベジャ県タストユールには同河川の中流に位置し、国内最大級ダムのシディサレムがあります。1981年、世界銀行とドイツ政府より完工された、水力発電機能も有する多目的ダムですが、近年、上流から流れ込む土砂により、ダムの洪水調節機能と貯水容量の低下から、JICAの事業も実施されています。


今回は北西部の見どころを紹介しました。北西部はチュニジア国民の主食パンの原料である小麦の産地としての役割だけでなく、チュニジア国内の水資源の供給地でもあります。南部の乾燥した雨の少ない気候と比べると、北西部は秋と冬は雨が降りますし、水資源に恵まれています。この時期に同地域へ訪れる方は、折り畳み傘を忘れないでくださいね。

同地域には、まだまだ知られていない歴史的に重要な古代遺跡が多く眠っています。ベジャ県のドゥッガ遺跡をはじめ、ぜひ遺跡巡りにも挑戦してみてくださいね。

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