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チュニジア現地レポート(第23回)西アフリカへの日本企業の進出事例

 こちらの記事は、アフリカ諸国へのビジネス展開に関心がある方々にお伝えしたい情報です。

 今回注目する地域は西アフリカです。同地域は、主にフランス圏諸国が多く、特に小国セネガルは、西アフリカの中で政治的に安定していると言われ、面積・人口ともチュニジアと同等規模で、今年のAU(アフリカ連合)の議長国でもあります。

 一方で、西アフリカ地域は他にも注目すべき企業が多数あります。今回は、過去に開催されたTICADのサイドイベント等に参加した企業の中で、個人的に興味深かった事例を紹介したいと思います。

 

1. ブルキナファソ:株式会社秀農業(イチゴ栽培、仏語圏) 

 ブルキナファソは約60の民族を有する多民族国家で、各民族でそれぞれの言葉を有するため、フランス語が事実上の公用語ともなっています。北部はサヘル地域(大サハラ南部の縁)に位置し、中央部に首都ワガドュクを置く、人口2000万人の内陸国です。

 同国は、南部で国境を接するガーナ同様、シアバターで知られるシアの実の産地としても有名です。シアの木から採れる実は、6月から9月の雨季に収穫され、現地では“女性の金“とも呼ばれ、女性にとっては自然の恵みからもたされた基礎化粧品です。有名ブランドのロクシタンでは、同国産シアバターが販売されています。

 さらに西部ではマンゴーが栽培され、欧州や中東へ輸出されるなど、豊富な農作物も有します。

 そんな同国に進出しているのは、愛知県一宮市の株式会社秀農業です。同社はイチゴ栽培事業を手掛けており、既にアジア地域にも進出しています。同国中央部に位置する首都ワガドュグ近郊では1970年代後半からイチゴ栽培が行われており、西アフリカ地域では唯一のいちご生産及び輸出をしています。

 同社は、2018年JICAの案件化調査を活用し、日本のポット育苗システムをブルキナファソに導入し、高品質なイチゴを安定生産しようと進出を果たしました。JICAにとっても同国初の民間連携事業となります。ABEイニシアティブでは、2019年にナミビア、マダガスカル、ガンビア、2020年モザンビーク、セネガル、ガンビア、2021年コモロの計7か国から研修受入をしています。2019年の第7回TICAD開催直前には、共催者のUNDPがJICA中部センターで開催したTICAD7 アフリカビジネスセミナーにて登壇しています。

2. カメルーン:株式会社TMT.Japan(バイオトイレ建設、仏語圏&英語圏) 

 カメルーンは、全10 州のうち首都ヤウンデを含む8州がフランス語圏で、英語圏ナイジェリアと国境を接する西部2州の英語圏に分かれています。同国西部はギニア湾に面し、国内に270以上の民族を抱え、人口2600万程の国です。外交では仏語圏としてOIF(フランコフォニー国際機関:世界88の仏語圏の国々が参加する国際機関)、英語圏として英国連邦(Commonwealth of Nations:主に英国の旧植民地からなる世界56か国)の一員でもあります。

 そんな同国に進出した日本企業は、大分県の中小企業3社で設立した株式会社TMT.Japanです。2015年からJICAの案件化事業、2016年から普及・実証・ビジネス化事業を実施し、2019年の第7回TICADに登壇しています。

 同社は、ヤウンデ市と国立ヤウンデ第一大学に水が不要なバイオトイレ「バイオミカレット」を16台設置し実証実験を行っています。さらに同社は、2017 年「大分県-カメルーン共和国友好協会(FACO)」を結成し、同国とのさらなる友好関係構築に努めています。

 同国には、同じく大分企業の株式会社ビッグウェーブカワサキが進出しています。同社は、循環型社会に向けた使用済み自動車リサイクルビジネス事業で2020年からJICAの案件化調査を実施しました。

 自動車と言えば、1986年のチャド・リビア戦争は、戦場である砂漠を走る性能の良いトヨタ車の名からトヨタ戦争とも呼ばれ、大陸全体での日本の中古車ビジネスも盛んです。チュニジアでは大手フランス車が主流で、中古車も主にヨーロッパから輸入されています。また日本車のショールームも見受けられますが、チュニジアは所得に占める車の購入費の比率が世界で高い国としても知られています。

3.ナイジェリア:日東建設株式会社(コンクリートの圧縮強度推定装置、英語圏)

 最後に、比較的フランス語圏の多い西アフリカではありますが、大陸最大の人口2億を誇る、英語圏ナイジェリアについて紹介したいと思います。

 同国は、豊富なガスや石油の天然資源を保有し、近年ではOPECプラス会合でも国際社会でのプレゼンスを高めています。また同国も他民族国家で大きく3民族が主流で、中でもハウサ語の話者は周辺国にも広がり、同国北部に位置するニジェールではハウサ語が公用語の1つとなっています。また、アメリカのハリウッド、インドのボリウッド、アフリカの“ノリウッド”として、サハラ以南の英語圏の映画産業を牽引している国でもあります。

 この地に進出した日本企業は日東建設株式会社です。同社は北海道に本社を置く、1952年に創業した総合建設会社です。2005年から世界展開を目指しており、以前から同社の製品は海外からの引き合いがあり、同国への進出も海外でのイベントに出展した際にナイジェリア人の目にとまったことがきっかけとなりました。

 同社は、2014年JICAの普及・実証事業を利用し、同国に進出しています。2016年のTICAD開催地の英語圏ケニアでのサイドイベントにも登壇し、製品を展示しています。

 同社によれば、同国の資源価格の変動による為替リスクへの対処、またアジアのある国では知的所有権を侵害された経験もあり、様々な困難に立ち向かいながら、世界進出を試みています。  


  今回は、西アフリカ諸国について紹介しました。チュニジアとの共通点といえば、フランス語とクスクスです。
 チュニジアで日常的に話されるアラビア語方言にはフランス語の語彙が多く入っており、ティケ(ticket)やサカド(sac à dos)、サイエ(ça y est)等、フランス語圏外のアラブ人にとって理解するのに最初は苦労しますが、文脈、状況、標準語フスハーを介した相互理解等で慣れていきます。西アフリカ地域でのフランス語の使われ方にも注目したいですね。

 クスクスはアマジグ料理として名高いですが、実はサハラ以南でも似た料理が存在します。セネガルには チェレ(thiere)と呼ばれるセネガル版クスクスがあり、マグレブ版との違いはセモリナ粉ではなく、グルテンが含まれていないmil(millet、雑穀)を使用することです。アマジク人はモロッコのシルハ族、アルジェリアのカビル族、さらには、マリとニジェール、アルジェリア、リビア国境の大サハラのトュアレグ族等、広範囲にわたり分布していますし、サハラ以南で食べられたとしても不思議ではありませんね。是非各国のクスクスを食べ比べて見てくださいね。

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