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チュニジア現地レポート(第8回): チュニジアにおける新型コロナウイルス感染症への対応状況

2022年8月開催予定のアフリカ開発会議(TICAD8)開催国であるチュニジア。

チュニジア在住の弊社スタッフSが、
チュニジア北部・南部両方での居住経験をもとに、工業・人材・食・生活・美容など、多種多様なチュニジアの魅力を様々な角度からご紹介していきます。

今回の記事では、チュニジアでの新型コロナウイルス感染症の動向や対応策の現状についてご紹介します。

1.新型コロナウイルス感染症の蔓延初期の状況

2020年1月のチュニジアは、連日中国での感染状況、その後は2月下旬の隣国イタリアや韓国での感染拡大が報道され、チュニジア国内でも今か今かとコロナの脅威が迫り来る状況でした。

当時私の通っていた語学学校では、イタリアや韓国からの留学生が多く、街中で彼らが受けた差別発言の体験談を耳にしていました。
しかしながら実際、チュニジア国内で初のコロナ感染の確認が発表されたのは、2020年の3月2日、イタリア人でもアジア人でもなく、イタリアから2月27日に帰国したチュニジア人だったのです。

こうした中で、メディアやSNS上では、当時感染が拡大していたヨーロッパ在住のチュニジア人の帰国に関して、チュニジア人同士で不要な帰国は避けるようにと呼びかけが行われていました。これは感染者が少ないチュニジアへ帰国することによる母国での感染拡大を懸念してのことでした。

当時のチュニジアは、2月に新内閣が発足してすぐでしたが、就任後間もないファフファーフ首相は早期の国境封鎖、外国に住むチュニジア人の帰国便の手配から隔離施設の提供まで、様々な政策を打ち出しました。

医者であった当時のメッキ保健大臣は国民への予防対策と、チュニジアの限られた病床数など脆弱な国内のインフラ状況の周知によって、3月から4月は国民総出で自粛生活、感染拡大予防に努めることとなりました。

2.新型コロナウイルス感染症の封じ込めに一度は成功(伝統や習慣よりも感染対策を優先)

その後、政府の迅速な対応もあり、新規感染者がゼロとなる日々が一週間以上続きました。7月までの総感染者数は1,500人前後で、国民はコロナの封じ込めに成功したという自負もありました。

このような成果の背景には、保健省をはじめとして、メディアを通して、台湾や韓国の感染対策を引き合いに出し、チュニジア国民に対して様々な感染予防の啓蒙活動をしたことにあります。
なぜなら、チュニジア社会では、感染が拡大する要素が生活の中でふんだんに散りばめられていたため、国民の日々の意識改革が必要だったのです。

まず、年配層にとっては食事をとるときは大皿1枚を家族全員で食べることが当たり前であり、お皿を別々にすることは仲が悪いと考えられています。
また、男性はカフェで水たばこ(シーシャ)をよく仲間内で回し吸いをします。
さらに、日課で通う礼拝所での集団感染リスク、挨拶の一部として“両頬に数回交わすキス(ビズ、ブーサ)”など、日本にはない独自の文化がコロナの感染率を高める可能性が当初から懸念されていました。

こういった、あらゆる面で人と人との濃厚なコミュニケーションで成り立つチュニジア社会で、既に生活の一部となっている伝統や習慣を変えることは、そう簡単ではありません。
マスクに関しては、病人以外は着ける習慣はありませんでしたし、くしゃみや会話の際に外してしまうといった日本ではありえないようなことが、起きてしまう状況でした。

こうした中でも、2020年の6~7月は感染予防対策が功を奏したため、元の日常へ戻る期待も国民の中では高まっていました。

3.再び感染者数が増加し、withコロナのチュニジア社会に

しかしながら、その後の出入国の再開と、夏以降の観光客の受け入れ再開に伴い、9月以降の感染者は1万人を超え、今年1月には10万人超え、5月29日現在で累計34万人(人口の約2.9%)に達し、新たな変異株も確認されています。

昨年7月に新発足されたメシーシ内閣では、感染リスクが高い連休前後等で定期的に都市封鎖や夜間外出禁止令、飲食店への時短営業の要請などが実施されていますが、感染者数はとどまることを知りません。

これはチュニジアだけではなく、今年は成功例とされた台湾でも感染拡大が確認されており、今後ワクチン接種率が明暗を分ける可能性もあります。
チュニジアでも3月中旬からアストラゼネカ、ファイザー、スプートニク、シノファーム等のワクチン接種が始まり、医療従事者と高齢者を優先して接種が可能となりました。

希望者は登録の上、全員無料で段階的に接種可能です。5月29日時点で人口1,169万人のうち、約17.3%(約202万人)、およそ6人に1人が接種を希望しています。1回目のワクチン接種完了者は5.3%(約62万人)、2回目のワクチン接種率は2.4%(約28万人)となっています。

Withコロナのチュニジア社会では、皆がマスク着用義務の下で日常生活を送っていますが、長く続くコロナ疲れでマスク着用を守らない人々もいます。

また、全ての公立小学校と一部の私立小学校では遠隔授業が行われず、去年から授業時間が例年の半分に縮小されたままです。教育の質という面で、未学習の範囲が蓄積されていることでの将来的に生徒への負担が懸念されます。

一方でヨーロッパでは今年も夏の長期休暇が始まり、ワクチンパスポートの導入による海外旅行の解禁が予想されますが、国の経済を支える観光業を重要視するチュニジア政府は観光客の受け入れは門戸を開くでしょう。

こうしたヨーロッパからの観光客流入にかかる措置と国民へのワクチン接種、負担を強いられる国民、特に子供達へのフォローアップは今後のポストコロナ社会へ向けて政府の課題となるのではないでしょうか。


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