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チュニジア現地レポート(第3回): 現地市場での日本企業展開のポテンシャル(2)

この記事は、アフリカをターゲットとした販路開拓や海外企業との協業等を検討されている、経営者や事業責任者の方にお伝えしたい情報です。

2022年8月開催予定のアフリカ開発会議(TICAD8)開催国であるチュニジア。

チュニジア在住の弊社スタッフSが、
チュニジア北部・南部両方での居住経験をもとに、
工業・人材・食・生活・美容など
多種多様なチュニジアの魅力を様々な角度からご紹介していきます。

前回の記事では、チュニジア国内に進出している日本企業の全体像と、注目すべき人材やインフラの状況についてご紹介しました。

今回の記事では、日本企業の進出事例を個別に掘り下げます。
日本はチュニジア国内での欧州向け自動車部品製造で
ドイツ、フランスに次ぎ第3位に位置しており、
同国内で6,000人以上の雇用を創出しています。
企業の多くは北部に集中する中、
今回は南部と内陸部に展開している日本企業をご紹介します。

1.矢崎総業(自動車用部品の生産)

矢崎総業は、
車のワイヤーハーネスを製造する欧州子会社として、
2009年に南部内陸部のガフサ県に矢崎チュニジア有限会社(YTU)を
設立しています(その当時、県内で最大級の規模)。
その他に北部のケフ県、ナブール県にも工場を構え、
2011年にはイタリアのワイヤーハーネスメーカーを買収し、
北部沿岸のビゼルタ県で
矢崎オートモーティブ・プロダクツ・チュニジア有限会社(YAP-T)を操業しています。

女性従業員が多いYAP-Tでは、
今後は工場の付近に保育園をつくるなど、
さらに女性従業員が働きやすい環境を整備することや、
地域の子どもたちへの教育支援など社会貢献活動も期待されています。

同社は、2011年「アラブの春」の影響で
チュニジアから150社以上の外資系企業が撤退した後も、
チュニジアに留まり操業を続けました。
またチュニジア全土で初等教育の普及と高等・専門教育に
力を入れてきた成果として教育水準が高い一方で、
南部や内陸部は北部や沿岸地域に比べ、
高等教育修了者の数に見合う十分な就職先がなく、
高失業率や地域間経済格差が「アラブの春」の引き金となった
という見解を示しており、こうしたチュニジアの抱える
構造的な課題の解決にも貢献し続けています。

従業員とその子どもたちでの遠足をしたりと、
従業員との関係も長年にわたり良好です。
内陸部での操業や地元企業からの積極的な調達を通じて、
地域の経済発展にも貢献しており、
2018年に同国政府からチュニジアへの貢献度が高い企業として認められ、
「Inclusive Award」を授与されています。

2.住友電装(自動車用ワイヤーハーネスの製造)

ローマ時代からの穀倉地帯として知られ、冬は雪景色が広がり、
アルジェリアと国境を接する北西部のジェンドゥーバ県の内陸工業地帯に、
住友電装は2008年から電気ケーブルや
自動車用ワイヤーハーネスの製造を専門とする製造拠点を構えています。

ワイヤーハーネスの製造は
住友電気工業と合わせて世界シェア1位を誇っており、
早くからチュニジアが
欧州市場にとって戦略的な位置にいる
という優位性を理解していたのではないでしょうか。

2009年にはカルタゴ投資フォーラム63において、
チュニジア政府から「The Welcoming Award」を受賞しており、
多くの企業が首都周辺、地中海沿岸地帯に進出している中での、
北西内陸部への進出はチュニジアの雇用創出に大いに貢献しているといえます。

また、2020年より東欧での人件費の高騰により、
モナスティール県の工業団地ネオパークにも
2カ所目の欧州自動車会社向けの自動車部品生産工場を立ち上げ、
2000人の雇用、生産本格化の段階で5000人の雇用を予定しています。
ワイヤーハーネスに加えて欧州車のプジョーとシトロエンの
電子部品も生産予定で、21年中に稼働予定とのことです。

3.フジ・インバック(ドローン事業)

自動車関連工場の進出が目立つ中、南部沿岸のスファックス県では、
ドローンの開発・製造・販売を手掛けるフジ・インバック社が
2018年に政府、民間企業向けに固定翼ドローンのデモ飛行を実施しており、
2019年にはチュニジアの Telnet Group 社とドローン製造で提携する合意をしています。

実は、チュニジアでは水面下でドローン作りが行われており、
チュニジア政府は2020年、国内開催の国際航空防衛見本市にて
民間と軍事の両方の分野で国産ドローンの発表を行っています。

フジ・インバック社は新興国に大きなビジネスチャンスがあると考えており、
東南アジア諸国やアフリカなどの新興国地域を中心に、
国境監視や海洋監視、パイプライン検査などの多様なニーズを踏まえ、
製造拠点を国外に移し技術移転をして、
日本国内ではエンジンなどの主要部品だけを生産する
という戦略を試みています。

(プチ知識)
スファックス県はチュニジア人にとっても比較的に商売上手で働き者の県民性と言われています。
また南部に位置しながら地中海にも面しており、様々な工場が立ち並んでいます。

次回は、アフリカ・中東・EUと幅広く活躍するチュニジア人人材の動向についてご紹介します。

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