持続可能な開発目標(SDGs)に貢献する途上国ビジネス展開の3つのメリット

途上国ビジネス支援・海外開発コンサルタントの杉田昌也です。
この記事は、途上国・新興国でビジネスを展開している、あるいは今後展開したいと考える企業の皆様にお伝えしたい情報です。国際連合(国連)が掲げる持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals, SDGs)への貢献を兼ねる形で自社ビジネスを行うことの3つのメリットについてご紹介します。
SDGsとは、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」で掲げられた、2016年から2030年までの国際目標のことです。
持続可能な世界を実現するため、貧困・保健・教育・エネルギー・雇用・気候変動・資源など17分野のゴールと、それらを達成するためのターゲット項目で構成され、地球上の誰一人取り残さない(leave no one behind)ことを目指しています。
1. 投資対象としての魅力の向上につながる
一般に、企業は自社のビジネスを通した顧客や社会への価値の提供、雇用の創出、納税等により社会に貢献しています。
これに加えて、近年では社会的責任投資(SRI、Socially Responsible Investment)や、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の観点を考慮したESG投資にみられるように、投資対象として企業を評価する際にも、社会的な観点がより重視される傾向にあります。
このような状況の中、自社のビジネスを通したSDGsへの貢献は、投資家から見た企業の魅力の向上にもつながっています。
例えば、世界最大の機関投資家である日本のGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、長期的なリターン増大の観点から、SDGsに賛同する企業への投資に高い関心を持っています。
また、SRIやESG投資を行うファンドの多くが、持続的な成長やビジネスチャンスの拡大といった観点から、SDGsに関連付けた自社ビジネスを行う企業を投資対象として高く評価しています。
2. 海外の顧客からみた自社ビジネスへの理解が深まる
SDGsは全世界共通の目標ですが、17分野のゴールのうち各国が特に重視すべきものは、それぞれの国が抱える事情によって異なります。
例えば、日本では生活基盤は十分に整備されていますが、「ジェンダー平等」や「働きがい」といった分野では、先進国と言うには程遠い現状があります。
他方で、生活基盤の整備が十分でない開発途上国では、教育や保健、水・衛生といった人々の生存と自立を支える分野のニーズが特に高いといえます。
このため、SDGsのうち、開発途上国でのニーズが特に高い分野の目標達成に自社の製品が貢献することをアピールできれば、ビジネス展開対象国の顧客やパートナー企業が、自社の製品やビジネス展開の方針、製品の普及を通して目指すべき社会の姿などを、世界共通の目標を介して、より深く理解することにつながります。
3. 国際援助機関も含めた新たな顧客の開拓につながる
世界各国の政府や民間企業等と同様に、SDGsを掲げている国連に代表される国際援助機関も、SDGsの達成に貢献すべく様々な活動を行っています。特に、近年は国際援助機関と民間セクターの連携が重視されるようになってきました。
この背景には、SDGsの達成に向けて必要となる資金が、これまでの公的セクターを中心とした開発援助資金の規模をはるかに超えているため、民間セクターとの連携なしではSDGsを達成できないとの認識があります。
SDGsの達成に向けて、例えば、国連開発計画(UNDP)は多くの日本企業と連携し、SDGsに貢献する各種の取り組みを進めています。
他方で、これを企業側からみると、SDGsという共通の目標なしでは関係を構築できなかった、新たな顧客・ビジネスパートナーの開拓や、自社の世界的な知名度の向上にも寄与しています。
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