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チュニジア現地レポート(第14回):収穫時期を迎えるチュニジアのオリーブ

こちらの記事は、チュニジアの食材や食文化に関心を持つ方にお伝えしたい情報です。

チュニジアはアフリカ大陸の最北端に位置しながら、中東圏にも属すると以前のブログ で紹介しました。

それだけでなく、チュニジアは距離的にそれらの国々よりも、はるかに近い地中海沿岸諸国にも属し、イタリアやマルタをはじめとした国々と共通する食文化も持ち合わせています。

今回は地中海諸国で収穫期を迎える、チュニジアのオリーブについて掘り下げていきたいと思います。

日本でもお馴染みのオリーブオイルで有名なスペインやイタリア、ギリシャは地中海に面していますが、その他にもオリーブを含んだアレッポ石鹸の生産地であるシリアをはじめとした東地中海諸国でもオリーブは栽培されています。

1. 10月から12月はオリーブの収穫時期

チュニジアを含む地中海沿岸諸国では10月頃から12月の間にオリーブの収穫時期を迎えます。

オリーブは古代より地中海沿岸諸国で栽培されており、チュニジアにはフェニキア人が建てたカルタゴの時代から存在し、ナーブル県には樹齢2500年を超えるオリーブの木も存在します。オリーブ生産で名高いスペイン南部アンダルシア州やイタリア南部プーリア州もオリーブ生産地で、収穫時期を迎えます。

チュニジアのオリーブ生産は近年注目を集めています。スペイン やイタリアのオリーブの産地では、近年、砂漠化や木の病気が進み収穫量が減少している一方で、チュニジアは肥沃な大地を有しており、オリーブオイルの2019年輸出量は、欧州連合に次ぎ、世界第2位です。

オランダ政府によれば、実はチュニジア産の80%は、ほぼ瓶詰めされずに欧州へ輸出され、オーガニックオリーブオイルの輸出国としては、既に世界一です。

筑波大学の地中海・北アフリカ研究センターも、チュニジアのオリーブの葉は再生医療のシーズの可能性を秘めており、通常の欧州産のオリーブの10倍以上ポリフェノール(がんや動脈硬化を予防)が含まれているという研究結果を出しています。
近年、チュニジア産オリーブオイルは金賞を受賞していることも紹介しました。

2014年に初めて、NY品評会で2つのメダルを受賞してから、今年2021年のNY品評会ではエキストラバージン部門、オーガニック部門で、過去最高の計30メダルを獲得し、うち18メダルが金賞です。

たった8年で数としては15倍、これはチュニジア産オリーブの品質向上を裏付けているのではないのでしょうか。

オリーブの収穫は、傷がつくと酸化が進むため、チュニジアでも伝統的な手摘みで行われています。

同国中小企業省によれば、チュニジア農産物輸出のおよそ50%がオリーブオイルで占められています。

2. オリーブの特産地(スファックス県、シディブジド県、サーヒル地域)と品種(シムラーリ種、シトウィ種)

オリーブは温暖で雨の少ない地域、乾燥した環境での適応力が高く、チュニジアの場合、南北に3つの気候を持ち合わせていながら、砂漠地帯を除く全土で栽培されています。

特に、より乾燥した中部から南部にかけてオリーブ栽培は盛んで、全体のおよそ5割以上が中部産です。

2018年のFAOの報告書によれば、オリーブの作付面積が大きい地域は、スファックス県、次いでシディブジド県、メドニン県で広範囲でオリーブが栽培されます。
またサーヒル地域(スース県、モナスティール県、マハディーヤ県)には、スファックス県と並んで大規模な搾油工場が集積しています。
南部は、全体の20%ほどの生産量ですが、砂漠地帯を避けた、地中海沿岸地域で栽培されています。
北部は、生産量第一位のスファックス県の総生産量に満たないものの、ザグワン県、ナーブル県ほか広範囲でオリーブが栽培されています。

オリーブにも品種があり、チュニジアでは中南部一帯のシムラーリ(Chemlali)と北部一帯のシトウィ(Chetoui)が収穫量の大半を占めています。

2021年スイスのチューリッヒで開催された品評会でもこの2品種で金賞を受賞している生産者が多数です。


List of Extra Virgin Olive Oils / Participants of the Olive Oil Award 2021
https://www.zhaw.ch/storage/lsfm/ueber-uns/oliveoil/2021/List_of_EVOO_OOA_2021.pdf


2品種以外にも、地域別で栽培されている品種があります。
北部ではアリアナのミスキー種。北西部ではケフ県、シリアナ県、ベジャ県のジャルブーイ種、中部ではシリアナ県とカイラウェン(ケロアン)県境でウスラーティ種があります。

南部ガフサ県にはシムシェーリ(Chamchali)種、主に沿岸メドニン県ではザッラージ種があり、北部の姉妹種としてアリアナに北シムシェーリ種と北ザッラージ種が存在します。

実は、チュニジア最南端に位置するタタウィン県の沿岸地帯でもトュッファーヒ種が栽培されています。

3. 日本のオリーブ農園、大学の取り組み

上述の通り、オリーブ栽培に適しているのは、地中海諸国の程よく乾燥した気候ですが、実は、日本でも自治体規模で様々な取り組みが行われています。

瀬戸内海にある香川県の小豆島は、雨が少なく温暖な気候のため、100年以上前からイワシやマグロの油漬け用にオリーブの自給自足に成功し、「オリーブの島」と呼ばれ、「オリーブ」は県花・県木に指定されています。

全国のオリーブ出荷量の9割を占めており、オリーブ牛、オリーブラーメン、オリーブ茶、オリーブ美容液など、さまざまな商品に加工されています。

某農園は日本で最初にオリーブの有機栽培を始め、手摘みでのオリーブの収穫をしています。
最も古い品種は100年前に栽培が始まったミッション種で全12品種を栽培しています。


NHK WORLD-JAPAN – Shodoshima Olive Grower –
https://www3.nhk.or.jp/nhkworld/en/ondemand/video/6023019/


近年では静岡県藤枝市でも地域振興の一環として、オリーブ観光農園が2022年に開園します。

筑波大学はJICAのプロジェクトで日本で唯一のオリーブ生産地である小豆島企業と共同調査レポートを出しており、前述の通り、すでにチュニジアを拠点に有機オリーブの研究センターを設けています。
さらに大学発のベンチャー企業アレナビオを設立し、2018年にはチュニジアと縁のある宮城県の寒冷地で地域振興の目的で、シトウィ(Chetoui)を使用した研究栽培を実施しています。

今回はオリーブについて紹介しました。

チュニジア人にとってオリーブは大変身近な存在で、食事でもオリーブオイルをふんだんに使います。

(写真は、10月半ばの収穫可能なオリーブ)

例えば、朝から主食であるバゲット(フランスパン)にオリーブオイルとチーズをつけて食べます。
揚げ物以外のチュニジア料理でも頻繁に使用します。
さらに手作りドレッシングもオリーブオイル、レモン、ビネガー、塩、胡椒、ジンジャーパウダー等で作り、古くからヘアオイル、乾燥対策にボディクリームとしても使用され、喉が痛い時にはオリーブオイルを飲みます。
腐食防止としての役割もあり、ハリッサの保存や火を通した肉等の保存にオリーブオイルを加えます。
チュニジア版の漬物“オリーブの塩漬け”も、料理のアクセントとして食ベられています。

アラビア語で油のことを「ザイトュ」、オリーブ油を「ザイトュ・ザイトューン」といいますが、この言葉からも、古代の人々にとって「油」と言えば、「オリーブ油」だったのかもしれません。

日本人もオリーブオイルの消費で、近年世界の上位に位置していますが、日本市場にもチュニジア産のオリーブオイルは出回っているので、ぜひ試してみてくださいね!


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