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チュニジア現地レポート(第6回): 周辺国から注目されるチュニジアの医療ツーリズム

こちらの記事は、チュニジアやアフリカ北部の医療ツーリズムに関心がある方にお伝えしたい情報です。

2022年8月開催予定のアフリカ開発会議(TICAD8)開催国であるチュニジア。

チュニジア在住の弊社スタッフSが、
チュニジア北部・南部両方での居住経験をもとに、
工業・人材・食・生活・美容など
多種多様なチュニジアの魅力を様々な角度からご紹介していきます。

前回の記事では、チュニジアで2021年年初から4月にかけて行われている、政治・経済・文化的に重要な行事についてご紹介しました。

今回の記事では、リビアやアルジェリア等の周辺国からも注目を集めている、チュニジアの医療ツーリズムについてご紹介します。

1.隣国のアルジェリア人・リビア人がチュニジアの医療機関を利用

私が以前に居住していた首都チュニスでは、
語学学校、スーパー、レストランなどで、様々な国からの来訪者に出くわしました。

例えば、
アフリカ大陸の中でもフランス語圏(マリ、ギニア、セネガル、コートジボワール等)やアラビア語圏(西サハラ、チャド、エジプト等)の出身者、
イタリアやスペイン、フランス、スイス、ベルギー等のヨーロッパ大陸出身者、
中東からはシリア、アジア勢では韓国、中国のアラビア語学科の大学生一団やビジネスマン等、
多くの国からチュニジアを訪れている人々がいました。

今回の記事では、隣国のアルジェリアとリビアに注目したいと思います。
この2か国はチュニジアと国境を接していることもあり、
街中でのアルジェリア人・リビア人との遭遇率は高いです。

特に興味深かったのは、眼科や心臓外科等の専門医療機関の前で車を止めて順番を待つアルジェリアやリビアナンバ-の車を、街中で頻繫に見かけたことです。

もともと、アルジェリア人は休暇や観光先としてチュニジアを訪れる数も多く、レストランでは家族連れのアルジェリア観光客としばしば席を隣り合わせにしたこともありました。

リビアでは長年にわたる医療インフラの崩壊により、国内での医療体制への不信感から、人々がわざわざチュニジアまで専門医を求め治療を受けに来ます。
また、2011年の内戦以後、チュニジアに住まいを移すリビア人富裕層もおり、大型スーパー等で爆買いする姿を幾度となく目にしました。

チュニジアでは、アルジェリアと同様にリビアとの経済的な結びつきも強く、南部の国境地帯ではリビア製品が、リビア国内ではチュニジア製品が出回っている程です。

首都チュニスでは、両国を往来するアルジェリアとリビアからの観光客や、医療ツーリズムの観光客に向けた配車サービスの需要があり、チュニジアにとっては重要な観光収入源となっています。

2.高度な歯科治療や美容整形が目的の外国人観光客

Medical Tourism Indexによれば、チュニジアは医療ツーリズム46か国中、総合38位に選出されています。
特に近隣諸国のヨーロッパからは、観光を兼ねて手頃な価格でインプラント治療や美容整形を行う病院を訪れる人が多く、首都で外国人に対して治療を行う医療機関も目にしました。

私も歯の治療で現地のチュニジア人が通う歯科を受診したことがあるのですが、長期の歯科治療だったにも関わらず、適切なアドバイスと治療のおかげか日本の歯科を受診することなく現在に至っています。
内装はとても清潔で、日本の歯科と変わらないような設備と環境でした。

また、チュニジア政府が運営する歯科も受診して感じたことですが、
民間の方が費用は高いものの、その分だけ顧客重視のようで、治療の進み具合のフォローや患者に対する誠意がより感じ取れました。

ここチュニジアには日本へ留学したチュニジア人の歯科もあり、既に日本人駐在者への高度歯科治療の実績もあります。
歯科の内観は日本の飾りで溢れており、日本を感じられる場所があることは、駐在者、在住者にとって心強いのです。

また、以前の記事で、チュニジアでは北アフリカで初となる女性の医者が誕生したことに触れましたが、旧宗主国のフランスでは医者の4人に1人が外国生まれで、そのうちアルジェリア、モロッコ、チュニジアの順にマグレブ諸国が上位を占めています。

3カ国で最も人口が少ないチュニジア人が、先進国と言われる国で活躍していることは注目すべき点です。
チュニジアへ高度歯科治療、美容整形に訪れる観光客がいることも頷けるのではないでしょうか。

3.温泉水を利用した伝統的な自然療法も

チュニジアには源泉が北から南まで全国100カ所程存在します。
日本の2.7万カ所には及ばないものの、チュニジアにも古くから湯治の文化があります。
源泉を利用して、リウマチ等の関節痛の治療や、部分入浴・全身入浴による皮膚炎の治療などが行われており、国内だけでなくアルジェリアやリビアからも患者が訪れます。

源泉の近くには治療センターやホテルも併設されています。
有名なのが、ナブール県にある“コルボス”です。
コルボスには7か所の源泉があり、近年では富裕層や観光客向けのリゾード地としても拡張工事がされています。

また、源泉の多い山岳地帯に位置するジェンドューバ県の “ハマムブルギバ” は、スポーツ選手の保養地にもなっています。

ハマムブルギバ|Objectif Prod TNチャンネルより

このような、チュニジア人と温泉の関係はローマ帝国時代の公衆浴場(テルマエ)跡まで遡り、アラブやオスマン帝国の公衆浴場(ハマム)文化として受け継がれてきました。現代でも、チュニジア人は定期的に垢すりや憩いの場として公衆浴場を訪れます。南部ガベス県には源泉を利用したローマを彷彿させる壁画のある公衆浴場もあり、市民に利用されています。

ちなみに、日本で話題となった「テルマエ・ロマエ」で描かれたローマの公衆浴場(テルマエ)跡が、ここチュニジアにも存在します。

北部カルタゴの大統領公邸近くの広大なアントニヌス浴場遺跡がその1つで、当時のローマ帝国内で3番目の大きさです。

アントニヌス浴場遺跡|TunisiaTourismTVチャンネルより

南部ガフサ県には、ローマ時代に水の神様ネプトゥーヌス(ポセイドン)の宿る神殿として崇められた場所があり、
現在では地元の人々が利用するプール場として夏に開放されています。

こうした様々な文化が行き交った歴史的背景もあり、政府も医療ツーリズム振興の後押しをしています。
すでに多くの観光客が訪れている地中海の海岸線リゾート地では、
フランス発祥の “タラソテラピー(海洋療法)“と言われる海水を利用したエステやジャグジーなど、様々なオプションがついたSPA施設をホテルに併設した” ウェルネスツーリズム“として、多くの観光客で賑わいを見せています。


以上のように、本格医療ツーリズムからリゾート地でのウェルネスツーリズムまで幅広く触れましたが、
古来より治癒力のある源泉を利用した伝統医療から、現在の観光客向けに高級化された観光資源への変遷がうかがえます。

最後になりますが、
実際にチュニジアで暮らしていると、本格的な治療に適した医療機関を国内で探すのにはまだ苦労しますし、評価の高い医療機関を探す上で、地元の人々とのつながりが重要になるのも事実です。

しかしながら、チュニジアやマグレブ地域も含めた世界各地で医療ツーリズムの需要が高まる中で、
海外からチュニジアの医療を求めて来訪する観光客に配慮した設備や制度、サービスの整備も、今後より一層進むのではないかと予想しています。


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