日本企業が途上国目線でSDGs(持続可能な開発目標)に取り組むためのポイント①
海外展開支援コンサルタントの杉田昌也です。
この記事は、ビジネスを通した途上国の課題解決や、
国連が提唱するSDGs(持続可能な開発目標)への貢献を目指す企業の皆様にお伝えしたい情報です。
日本には、世界の課題解決に貢献できる
技術・製品・サービスを持つ企業がたくさんあります。
一方で、
「ビジネスと国際貢献を両立させたいが、何から始めればよいかわからない」
「SDGsのロゴマークを掲げてはみたが、具体的な取り組みはこれから」
といった声も聞かれます。
この記事では、
日本企業が途上国の現場目線からSDGsに取り組む上でのポイントを
シリーズでご紹介していきます。
第1弾として、自社の製品とバリューチェーンに着目します。
1.そもそも、自社のビジネスは「世界の課題」と関係あるのか?
SDGsの17のゴールの中には、
日本国内の実態に当てはまるものとそうでないもの、
自社との関連性が明らかなものとそうでないものが混在しています。
例えば、世界各国と比較して
日本の達成度が低いゴール(ジェンダー平等、働きがいなど)については、
自社の内情を振り返ることで、比較的容易に関連づけることができます。
(だからといって、改善の取り組みが活発とは言えないのは残念ですが…)
一方で、日本ではほぼ達成されているゴール
(飢餓、教育、健康と福祉、安全な水、産業基盤など)ほど、
途上国の現場の課題をリアルに実感できず、
自社との関連性を見出すことも難しい傾向があります。
現場を知るためには、
実際に訪問し自分の目で確かめることがベストなのですが、
経営資源の制約もある中では必ずしも簡単ではありません。
そこで、まずはコストをかけずに着手できることとして、
以下の視点から自社の製品やバリューチェーンについて
考えてみることをおすすめします。
2.自社製品の機能や効果と、現場の課題との関連を見てみる
最も簡単にSDGsとの関連を見いだせるのは、
自社製品の機能や効果が、
直接・間接に現場の課題解決に貢献できることが明らかな場合です。
直接的な貢献とは、
例えば、飲料水の水質が悪い国に安価な浄水器が普及することで、
安全な飲料水を提供できる、というケースです。
間接的な貢献とは、
ソーラーパネルと蓄電池が付いた照明器具が普及することで、
現地の人々が夜間でも仕事や勉強ができ、
結果として産業振興や教育機会の拡大につながる、というケースです。
ただし、このような単純な構図が当てはまる企業は多くないと思われます。
だからこそ、冒頭でご紹介したような
「何から始めればよいかわからない」
といったお悩みが聞こえてくるわけです。
3.自社製品のバリューチェーンの段階別に見てみる
製品の機能や効果だけではSDGsとの接点が見えづらい場合、
自社製品のバリューチェーン(誕生~廃棄までの各段階で付加価値が生まれる連鎖の構造)の各段階に分けて見てみましょう。
一般に、製品はニーズと企画から生まれて、
設計、調達、製造、流通、販売、保守、修理といった段階を経て、
廃棄され寿命を終えるか、資源として再利用されます。
この各段階を個別に見ていくことで、
SDGsの特定の課題との関連性を見いだすことができます。
以下の例は、
①日本国内に拠点がある場合、
②現地に拠点がある(拠点づくりを目指す)場合です。
①日本国内で、海外から原材料を輸入し製品を製造し、海外に輸出している場合
・原材料の供給元である海外の企業が、
児童労働や環境破壊等を行っていないか?
(関連するSDGsのゴール:貧困、教育、海/陸の豊かさ)
・製品の設計で、海外の技術水準による
保守やリサイクルも想定されているか?
(産業基盤、つくる責任・つかう責任)
・公共サービス向けの製品が
許容量(定員、重量等)超えて使われる想定があるか?
(まちづくり、つくる責任・つかう責任)
②現地で工場を設立し、現地生産を行っている(目指す)場合
・工場に部品を供給してくれる裾野産業はあるか?
(関連するSDGsのゴール:教育、産業基盤)
・雨期・乾期を問わず、工場への電力供給や物流を安定できるか?
(エネルギー、産業基盤、まちづくり)
・必要な能力や技術を持つ現地人材を集められるか?
(貧困、教育、格差是正、働きがい)
・日本なら焼却処分できる廃棄物を
同様に処理できる施設が現地にあるか?
(つくる責任・つかう責任、気候変動、海/陸の豊かさ)
一見するとSDGsの各ゴールとの接点が見えにくい場合でも、
自社のバリューチェーンを細かく見ていくことで、
より具体的な接点を洗い出すことができます。
SDGsの達成には、
公共・民間、企業・個人を問わず、
様々な立場の方々が得意分野を生かして、
複雑に絡み合った課題の解決に取り組むことが欠かせません。
次回は、途上国のユーザーの目線から、
自社ビジネスとSDGsとの接点を探る方法についてご紹介します。
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