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魅力あふれるアラブの世界(第6回)アラブ圏の市場としてのポテンシャル (エンタメ編)

 この記事は、アラブ圏をターゲットとした商品開発や販路開拓、海外企業との協業等を検討されている、経営者や事業責任者の方にお伝えしたい情報です。
 弊社スタッフがアラブ圏での在住経験をもとに、工業・人材・食・生活・美容・宗教など、多種多様なアラブ圏の特徴と魅力を、様々な角度からご紹介していきます。

 今回は、すでにアラブ圏に進出している、あるいはこれから進出可能性のあるエンタメ分野について個人的に興味深い事柄を紹介したいと思います。

 以前のブログで、近年アラブ圏でも、湾岸諸国のファンドが日本のエンタメ分野の株を保有し、アニメ需要も高まっていることにも触れましたが、改めて、アニメを含めアラブ圏の方々がエンタメ分野にどのように関心をもっているのかご紹介したいと思います。


. アニメ

 現在のアラブ圏の30~40代にとって、日本アニメは子供時代に親しんでいた記憶があり、大人になった現在でも日本アニメの続編を日々追っている方、アニメ関連のグッズを買い求める方もおり、日本同様、大人にとっての娯楽としても定着しています。

 さらに、現代の子供達も親の影響を受け、子供時代にアニメに親しむ世帯が多いです。キャプテン翼、名探偵コナン、ワンピース、ドラエモン、ちびまる子ちゃんやドラゴンボール、ナルト等はもちろんのこと、進撃の巨人、鬼滅の刃等、幅広いジャンルのアニメが見られています。

 マグレブ地域のフランス語圏の30代以降の方は、比較的フランス語版での吹き替えを見る機会が多かったですが、湾岸諸国のオイルマネーによる経済発展で、アラビア語版吹き替えが増え、現在ではその恩恵を受け、アラビア語版で視聴する人が多くなっています。

また、湾岸諸国にはアラブ圏の人材も集まり、特にアラブ首長国連邦(以下UAE)とサウジアラビア(以下KSA)は、エンタメ分野をも牽引しています。

例えば、UAEでは、2012年に、米国発祥の映画・コミック・アニメ・ゲームなどを扱うイベントである、中東初のコミコン(MEFCC)が開催され、KSAでも2017 年ジッダでサウジ コミコンが開催されました。

 KSAでは、娯楽庁(General Entertainment Authority:GEA)が開設され、皇太子のアニメ好きもあいまって、アニメ関連事業での日本のエンタメ業界との協業が活発化しています。同国はイスラム教の聖地メッカを有する国として、厳格な戒律を重んじることもアラブ圏でも知られていますが、同国政府の改革路線により、同国でのコスプレやライブ、アニメ作品での肌の露出に対しても許容度が上がっています。

 22年5月には、同国第二の都市ジェッタでは「Jeddah Season 2022」が開催され、体験型イベントエリア「Anime Village」が設けられました。

サウジアラビアのジェッダシーズンで一番人気のアニメ・ビレッジ|Arab News Japanより


 22年11月~23年1月には、首都リヤドで「Riyadh Season 2022」が開催され、同国政府の強い希望により人気アニメを中心に日本のエンタメを体験することができる「Japan Anime Town」が設けられ、アニソンライブ「SACRA MUSIC MONTH」にも11組の歌手が登場し、10月には、「サウジアニメエキスポ2022」が、初開催の2019年から3年ぶりに復活しました。  

世界最大のアニメタウンが 350 以上のショーを開催するリヤド シーズンにて登場|Arab News Japanより


2. ゲーム

 湾岸諸国や北アフリカの砂漠地域の外気温の高い気候では室内で過ごす機会が多い人にとって、ゲームは室内娯楽の代名詞といっても過言ではないほど、熱中する大人も見かけます。特に湾岸諸国では日中40度を超えることもある気候のため、家の中で過ごす時間が長いです。さらにラマダン月は就業時間が短くなることや、コロナ禍の自粛期間中は巣籠り需要でゲームに最適な機会となりました。

 オイルマネーで潤っている湾岸諸国ではゲームに課金を惜しまない方もいますし、海外在住のアラブ人も多く、国際移住機関(IOM)によれば、チュニジアは日本の10分の1ほどの人口規模でありながら70万人が海外在住、日本と同等規模のエジプトは800万人、対して日本人は130万人ほどです。

 現代社会ではゲーム機がなくとも、場所を選ばず、スマホ1つあれば遊べる身近な娯楽になっています。ゲームはアニメ同様、標準語フスハーの音声や字幕に触れる機会となり、単に遊ぶだけでなく、アニメ、ゲームを通して自然と日常生活で使用しない標準語に触れる機会となり、当然ながらその機会は年配層に比べはるかに多くなり、若者の活字離れを防ぐ一助ともなっています。

 また、ビデオゲームを使用した対戦型スポーツゲームである“Eスポーツ”は、アラブ圏でもプレーヤーがおり、2019年には、日本とサウジで、Eスポーツ親善試合が初開催され、22年7月にも「日本・サウジアラビア e スポーツマッチ」が開催されました。サウジの長期国家計画「ビジョン2030にもエンタメ分野での経済発展が盛り込まれています。

【日本・サウジアラビアeスポーツマッチ SAUDI ARABIA ROUND】 鉄拳7|日本eスポーツ連合 – JeSU 公式チャンネルより

 ネイティブの話すアラビア語が日々変化しているように、アラブ圏でも上述のように変化を遂げている部分もあれば変わらない面もあります。是非、現地へ訪れて実際の空気感に触れてみて下さいね。


3. カラオケ機器(アラブ音楽、フランス音楽、アマジグ音楽、KPOP、アニメ主題歌)

 以前のブログで、アラブ圏に位置するチュニジアの朝のカフェでは、音楽が流されていること結婚式では音楽が盛大に流されることもあり、夜間だと窓から大音量の音楽が聞こえることも紹介しました。また結婚式はかつての日本のように自宅で行う方もいれば、式場を借りて行う方もいます。招待客の多くは待ち時間も長いため手持ち無沙汰になる方も多く、日本ではカラオケ店だけでなく、家庭用のカラオケが売り出されており、結婚式を人生の最大イベントにする大半のチュニジア人にとって結婚式とカラオケとの相性は良いのではないでしょうか。 

 アラブ世界は東西以外にも様々な地域色があり、アラブ音楽にもその土地の方言で歌われたラップやバラード調等、世代や個人で好みも異なり多様なジャンルがあります。

 マシュリクの東端に位置するイラク方言で歌われたKhuttarは地元の人でなければ理解が難しいですが、アラブ圏でも知られています。

 モロッコ、アルジェリア、チュニジアはマグレブ地域のフランス語圏を代表する国々で、フランス語圏の曲を聴くこともあり、日本では馴染みのない、フランスのZazやベルギーのStromaeなど、数々のアーティストがライブに訪れにくることもあれば、マシュリクの有名な歌手もライブに訪れ、両言語を味わえることが同地域の魅力でもあります。同じくフランス語圏のシャーム(レバント)に位置するレバノンではアラビア語、フランス語だけでなく、英語で歌う歌手もいます。

 近年、ネット環境の発展でマグレブ音楽が垣根を超えて、アラブ世界でも歌われ、マグレブ方言の歌詞に挑戦するマシュリク人もいます。イラン・サウジ人は、アルジェリア北西部オラン発祥のライ音楽で最も有名なAbdel Kaderをアカペラで、エジプト人はアルジェリアのZinaやレバノンのKifak Intaのマッシュアップ曲にも挑んでいます。

 アマジク音楽ではカビール人歌手Idirの代表曲 A Vava Inouvaや、トュアレグ人グループのTinariwenも知られています。

 若い世代ではKPOPも一斉を風靡しており、子供の頃にアニメに親しんだ世代は、アラビア語版の主題歌を聞くと口ずさむことができる人もいます。チュニジア人は歌うのも好きです。チュニジアではカラオケバーもありました。

 アラブ音楽だけでなく様々なジャンルの入った家庭用カラオケ機器の需要は、室内で過ごす機会が多い地域の人々にとっても娯楽の一つとなり得るのではないでしょうか。


 今回は、アラブ圏へすでに進出している、あるいは進出可能性のあるエンタメ分野について紹介しました。
 アラブ圏では、2023年のラマダン月(ヒジュラ暦9月)が3月23日から始まりました。以前のブログでラマダン月には連続ドラマが放映されることを紹介しました。この時期にアラブ圏に滞在の方は是非現地の方からおすすめドラマを聞いて見て下さいね。

 また日本では、桜が開花を迎え花見の季節となりましたが、チュニジアを含めたアラブ圏アーモンド文化圏の国々ではアーモンドの花が2月から3月に開花を迎え、桜のようにきれいです。

アーモンドの花

 チュニジアでは、緑茶にアーモンドの実を数粒入れて飲むほど身近な存在ですし、ラマダン明けの小イード(イードルフィトル)に親戚周りに持っていく菓子折りのチュニジア菓子にもアーモンドの実が使用されます。アーモンドの実だけでなく、花にも注目してみてくださいね。

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