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BtoBビジネスの海外展開 第1章:基礎編(2)成功に向けた5つの基本戦略

海外展開支援コンサルタントの杉田昌也です。
私は海外企業との直接的な取引や業務提携が必要なBtoBビジネス(日本企業~海外企業間でのビジネス)やBtoBtoCビジネス(日本企業と海外企業との取引や提携を経て海外顧客と行うビジネス)の実現をお手伝いしています。

本ブログでは、海外展開を目指すBtoB(BtoBtoCを含む)ビジネスの経営者様を対象に、海外向けビジネスモデルの考え方や、具体的な準備と検討の方法、成功に向けたポイント、活用すべき支援制度などの参考情報をシリーズで紹介しています。

前回の記事では、日本企業が海外展開を目指す背景や、多岐にわたる海外展開の方法、海外展開の成功例にみられる共通点について解説しました。
今回の記事では、BtoBビジネスの海外展開の成功に向けて、業種を問わず重要となる5つの基本戦略について解説します。

戦略1:自社に最適な対象国と市場を選ぶ

成功のための第一歩は、自社で展開したい製品・サービスに最適な国や市場がどこにあるかを的確に見極めることです。まずはWEB等で収集できる範囲で、自社の製品・サービスで解決できる課題(=応えられる顧客ニーズ)がある国はどこか、日本国内の顧客層と同じ業種の企業が多い国はどこかなど、自社の製品・サービスの適合性の観点から、10~20の候補国をリストアップします。

加えて、対象国の人口数や経済水準、将来の成長予測、外資に対する優遇や規制、政治的な安定性等の情報とも重ね合わせて、有望な国々を絞り込んでいきます。さらに、日本からの距離や時差、治安なども考慮しつつ、第一候補となる国々を3~5カ国程度に絞り込めると、その後の詳細な検討を行いやすいです。

他方で、実際には経営者の方の個人的な思い入れのある国や、海外からの問い合わせに対応する中でニーズが確認できた国など、様々なきっかけや個別的な理由で対象国が決まるケースも多くあります。その場合も、前述のような客観的な情報収集と分析は、対象国の有望さの裏付けを取ったり、想定外の課題を洗い出したりする上で大いに役立ちます。

戦略2:複数の切り口から市場調査を行う

前述の絞り込みにより有望国を3~5カ国程度に絞った後は、自社業界に特化した市場調査を複数の切り口から実施していきます。すでに把握している国全体の経済成長見通しに加えて、自社業界の観点での成熟度と成長見通し、顧客ニーズの現状と将来見通し、テクノロジーの進化への対応状況などを綿密に調査し、市場進出のタイミングや展開戦略を練り直す際に必要となる基本情報を揃えます。

また、すでに現地で事業を行っている競合他社の分析も重要です。競合他社の戦略、製品、価格設定、マーケティング活動等を調査しつつ、業界内での自社のポジショニングを検討することに加えて、必ずしも競合するだけでなく連携・協業の余地がないかも含めて検討することをおすすめします。

さらに、現地の見込み顧客やパートナー候補企業の生の声を聞く調査もおすすめします。ヒアリングやアンケート、モニター調査などを通じて、見込み顧客のニーズや現地競合他社への要望、日本企業への期待などを明確化しましょう。この結果を現地向け製品・サービスにフィードバックすることで、後述するローカライズや、新たな製品・サービス展開のきっかけにもなり得ます。

戦略3:自社に最適な進出形態を選択する

前回の記事で解説したとおり、海外進出の形態には、事業の特徴や将来目標、経営資源などに応じて様々な選択肢があります。例えば、現地企業との貿易取引による製品販売から、製品・サービスに関するライセンスの供与、開発・製造・営業・販売等に関する業務提携、フランチャイズ形式での事業展開、合弁会社の設立、直接投資による現地法人や工場の設立など様々です。

これらの事業形態の中から、自社の製品・サービスに適したものを、自社で許容できるリスクと目指すリターンの範囲内で選択することが基本となります。また、事業化の進捗に伴って、現地市場とより強く紐づく形に移行していくのが一般的です。つまり、事業化初期は現地企業へのライセンス供与や技術提携などの投資規模を抑えられる形態を取りつつ、一定の売上規模が見通せた段階で出資や合弁会社の設立に移行する、といった流れです。

現地企業との合弁や提携は、現地パートナーと経営資源やリスクを共有する方法です。現地パートナーがすでに持っているサプライチェーンやネットワークも活用できるため、現地市場に迅速に適応できる可能性がありますが、現地パートナーとの信頼関係の構築や合意形成が極めて重要となります。他方で、自社の独資で設立する現地法人では、自社で経営全般をコントロールすることが可能ですが、新市場でのビジネス運営に伴うリスクも全て自社で負う必要があります。

戦略4:現地企業とのパートナーシップを構築する

現地企業とのパートナーシップについて、前述のような提携相手や合弁会社の設立相手はもちろん、現地市場内で取引や外注を行う複数の現地企業も含めて、広く良好な関係をつくることが、海外事業の成功には欠かせません。パートナーシップを通して、日本側ではなかなか知り得ない現地市場の生の情報が供給されたり、ビジネスネットワークの拡充、有望な人材の確保、日常業務の運営支援など、多岐にわたるサポートも得られます。

このような、信頼できる現地パートナーを見つける過程では、自社が望む現地パートナーのイメージをできるだけ具体的に持っておくことが重要です。例えば、想定される業務上の様々なタスクをどのように分担するか、そのタスクを分担できる豊富な経験や専門知識があるか、経営理念や製品・サービスに関わる価値観を共有できる余地がありそうか、などの点を確認する必要があります。WEB上の情報から複数の候補企業を絞り込み、各企業が掲げる経営理念等もチェックした上で、自社との相性がよさそうな企業に面談のオファーを出せると、その後の提携交渉へと上手く発展することが多いです。

戦略5:ローカライズした製品・サービスを継続的に改善する

前回の記事でも解説しましたが、ローカライズとは、自社のビジネスモデルや製品・サービスを日本市場とは異なる形で、現地の市場や商慣習、宗教や生活、顧客や社会のニーズに適応させることです。その中には、現地市場でのマーケティング戦略を再構築したり、顧客へのサービスを最適化することも含まれます。また、日本側での推測に基づいた形ではなく、現地市場の顧客が真に望む形でのローカライズを行うことが極めて重要です。現地の文化や価値観の尊重、顧客が感じる可能性のある摩擦を減らすといった感覚的な面も重視されるため、現地の自社スタッフやモニター顧客などとも連携して、市場の生の声を的確に把握しつつ取り組むことをおすすめします。

製品・サービス提供後の継続的な改善には、顧客からのフィードバックや市場の動向、競合他社の動向、テクノロジーの進歩等にも目を向けつつ、ビジネスモデルや製品・サービスの更新を断続的に行っていくことが重要となります。また、変化の激しい海外市場で自社製品・サービスの競争力を保ち続ける上で、環境の変化を見極めつつ自身も変化できる柔軟性と、市場で求められるニーズの変化に随時対応できる適応性が求められます。日本側・現地側で事業に関わる関係者全員がしっかりとアンテナを張り、市場の変化や新たなチャンスに対応できるよう、常に学び、評価し、改善し続ける姿勢を持つことが、継続的改善を実現できる組織の基本スタンスとなります。

次回の記事では、基本戦略その1「自社に最適な対象国と市場の選定」について、情報収集の具体的な方法や分析の手順などを掘り下げて解説します。


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