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BtoBビジネスの海外展開 第1章:基礎編(5)自社に最適な進出形態を選択するためのポイント

海外展開支援コンサルタントの杉田昌也です。
私は海外企業との直接的な取引や業務提携が必要なBtoBビジネス(日本企業~海外企業間でのビジネス)やBtoBtoCビジネス(日本企業と海外企業との取引や提携を経て海外顧客と行うビジネス)の実現をお手伝いしています。

本ブログでは、海外展開を目指すBtoB(BtoBtoCを含む)ビジネスの経営者様を対象に、海外向けビジネスモデルの考え方や、具体的な準備と検討の方法、成功に向けたポイント、活用すべき支援制度などの参考情報をシリーズで紹介しています。

前回の記事では、基本戦略その2「複数の切り口から市場調査を行う」際の具体的な方法について解説しました。

今回の記事では、基本戦略その3「自社に最適な進出形態を選択する」際に、最初に行うべきことと、具体的な選択肢、現地へのコミットを深める事業発展の例をご紹介します。

1.まずは自社製品・サービスの特徴を見極める

最適な海外進出の形を検討する際は、まず自社で海外展開したい製品・サービスの特徴を見極めることが重要です。例えば、以下の特徴を見極めることで、最適な海外進出の選択肢や、事業発展の方向性をある程度絞り込めます。

① 低単価か高単価か、規格品かオーダーメイドか?
低単価の物販製品やソフトウェア・アプリ等は、越境ECや世界規模のプラットフォームを通した販売展開が最も適しています。
一方で、製品・サービスが高単価になればなるほど、また販売前に顧客毎のカスタマイズが必要なオーダーメイドとなればなるほど、自社(日本または現地)や現地の提携先企業が直接、顧客との信頼関係をつくり、製品・サービスを提供する必要性が高まります。

② 売り切りか、アフターフォローが必要か?
顧客との取引と国際輸送による納品でビジネスが完結し、アフターフォローが不要な「売り切り」の製品は、越境ECや貿易取引で一定程度まで事業規模を大きくすることが可能です。
一方で、販売後に現地での据付や工事、最終加工等が必要になる製品や、中長期での保守・メンテナンス、システム更新等のアフターフォローが必要な製品・サービスは、現地でのアフターフォローの担い手となる現地法人や提携先企業との連携が不可欠です。

③ 短期での売上が見込めるか、中長期での営業や案件形成が必要か?
前述の①にも関連しますが、短期的なマーケティングや営業活動で早期に売上を実現できる製品やサービスがある一方で、中長期的に顧客や関係者とのやり取りを経なければ売上にならない事業(高額かつオーダーメイドの要素が強い製品、現地政府の認証を要する製品、公共事業や民間発注の土木・建設事業など)もあります。後者の場合、現地での拠点となる自社法人や提携先企業の必要性が特に高いです。

2.海外進出の様々な選択肢

以前の記事でも解説したとおり、海外進出を広い意味で捉えると、その事業の特徴や将来目標、経営資源などに応じた様々な選択肢があります。以下、取り組みやすいと思われる順にご紹介します。

(1) インターネット販売・越境EC
多言語で構築した自社のECサイトや、世界的なECプラットフォーム(Amazon、eBayなど)を通して、海外の顧客に商品やサービスを販売します。物流や通関、消費者対応等の実務ノウハウは必要ですが、既存のECプラットフォームを活用する場合は特に低コストで海外向け販売を実現できます。比較的単価の安い商品を一般消費者向けに販売するBtoCビジネスや、アフターフォローが不要な製品のBtoBビジネス等に適しています。

(2) 貿易取引
海外企業との商談を経て、無償または安価でのサンプル提供から、小規模・単発の取引、より大規模で継続的な取引といった形で、具体的な売上を伴う貿易取引が生じます。貿易に伴う書類作成や、物流業者・通関等との調整など、はじめての貿易取引は相応の業務量を伴いますが、同じ国・製品・顧客への2回目以降の取引は、既存の書類雛型やノウハウを活かして比較的容易に進めることができます。

(3) 業務提携(営業、生産、技術、ライセンス供与等)
自社と海外企業との間で、営業情報の交換や協業、案件形成、技術や特許の提供、製品の製造など、何らかの協力関係を約束します。双方が義務を負う内容と、法的拘束力の有無、金銭的条件の有無等に応じて、両社が合意できる落とし所を探ります。提携関係を維持する中で、将来的に資本提携や合弁会社の設立等に発展していくケースも多いです。

(4) 代理店/販売店契約
自社製品の営業活動を現地企業が代理で行う「代理店契約」や、一定量の自社製品を現地企業が買い取った上で再販する「販売店契約」は、現地への直接投資を行わずに海外へと販路を拡大できる方法の一つです。また、最初の1カ国で確立した契約体系を、2カ国目以降のたたき台として活用できるケースも多いです。
なお、日本では「販売代理店」という表現を耳にしますが、海外市場では販売店(Distributor)と代理店(AgentまたはSalesrep)は明確に区別されていますので、海外企業とのコミュニケーションの際は両者をはっきりと使い分ける必要があります。

(5) フランチャイズ(FC)
フランチャイズ(FC)とは、現地企業(加盟店)が日本の本部から、製品やサービスの現地での販売権や経営ノウハウ等の提供を受け、その対価として本部に加盟金やロイヤリティ等を支払う仕組みのことです。日本国内でも広く普及しており、主な事業投資を本部ではなく加盟店が行うことで、本部からみると比較的低リスクで事業を展開できる選択肢となります。ただし、海外にはFC制度を直接規制する法律がある国も多いため、ビジネスモデル検討の段階でFCが選択肢となる場合は、対象国のFC関連法制度に関する情報収集を十分に行うことが不可欠です。

(6) 資本提携
日本から現地企業に出資したり、現地企業から日本への出資を受け入れたりする資本提携では、両社の協業体制を深めつつ、事業のリスクとリターンも分担します。多くの場合、資本関係だけでなく、前述の業務提携(営業、生産、技術、ライセンス供与等)で述べた様々な協力関係をさらに深めることを伴います。

(7) 合弁会社
日本の自社と現地企業が共同で出資し、新たに現地で立ち上げるのが合弁会社です。前述の資本提携を既存の法人で受け入れるのではなく、新たな会社への投資とすることで、既存事業の経営体制に直接関与する/されることなく、新たな事業を両社の連携と責任分担の下で実施できます。

(8) 現地支社/自社独資の現地法人の設立
日本本社の経営責任に紐づく現地支社を立ち上げたり、自社からの100%出資により現地法人を立ち上げることで、自社単独で現地事業の経営を行う体制ができます。ただし、外国資本による法人設立に関する法制度は国によって様々です。支社と法人でできることの違いや、業種別の外資への開放性、最低資本金の有無、法人代表者の国籍の条件、現地従業員の雇用義務などを事前にしっかり確認しておくことが不可欠です。また、事業のリスクや責任も完全に自社だけで負うことになります。

(9) 現地企業の買収
前述の資本提携とも重なりますが、自社との高い相乗効果が期待できる企業などに対しては、経営権の取得を含めた買収も選択肢となります。買収に際しては、買収時の経営判断だけでなく、買収後の統合(PMI)の成否も、事業の継続と成長に直結する重要なポイントとなります。

3.現地へのコミットを深める事業発展の例

どんな海外事業も、最初は顧客やパートナー企業とのコミュニケーションからはじまり、販売や営業の体制を変えながら、段階的に事業規模が大きくなっていきます。その過程でよくみられる、海外事業の発展段階の例を2つご紹介します。

(1)貿易取引→代理店→独占販売店+代理店網
物販の事業で多くみられる例です。まずは1カ国・1社との貿易取引からスタートします。同じ国で複数企業との取引が生じ、一定のニーズがあることが分かった段階で、信頼できる現地企業が代理店として営業を支援します。さらに売上規模が拡大し、現地企業がまとめて仕入れて再販した方がメリットが大きい場合は、最も信頼の置ける現地企業が独占販売店となり、傘下の代理店網を経由して販売拡大していきます。

(2)業務提携→資本提携→買収
物販だけでなく、現地での案件形成が必要となる建設業やIT事業などにも該当する例です。まずは営業情報の交換や共同での案件形成の約束など、双方にメリットがある内容での業務提携からスタートします。複数の協業実績を積み重ね、双方がより深い連携関係の構築に前向きとなった段階で、低い出資比率での資本関係を結び、将来的には経営権の取得あるいは完全な買収へと発展します。

いずれの発展形態においても、日本で言う三方よし(買い手・売り手・世間すべての利益になる形)のように、自社と現地パートナー企業、現地の顧客、現地の社会や経済の全てにとってプラスとなる形で事業を運営できることが、成功裏に海外事業を展開する大前提となります。

次回の記事では、基本戦略その4「現地企業とのパートナーシップ構築」に向けた取り組みについて解説します。


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