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BtoBビジネスの海外展開 第1章:基礎編(4)複数の切り口からの市場調査

海外展開支援コンサルタントの杉田昌也です。
私は海外企業との直接的な取引や業務提携が必要なBtoBビジネス(日本企業~海外企業間でのビジネス)やBtoBtoCビジネス(日本企業と海外企業との取引や提携を経て海外顧客と行うビジネス)の実現をお手伝いしています。

本ブログでは、海外展開を目指すBtoB(BtoBtoCを含む)ビジネスの経営者様を対象に、海外向けビジネスモデルの考え方や、具体的な準備と検討の方法、成功に向けたポイント、活用すべき支援制度などの参考情報をシリーズで紹介しています。

前回の記事では、基本戦略その1「自社に最適な対象国・市場選定」を進めるための3つのステップについて解説しました。
今回の記事では、基本戦略その2「複数の切り口から市場調査を行う」際の具体的な方法について解説します。

1.対象市場の全体/部分/一点を捉える各種調査とそのねらい

市場調査は、自社が展開を目指す市場の規模や顧客層、競合他社、事業環境などを把握し、その後の効果的な営業やマーケティング、製品の開発や改良などに役立てることを目的としています。調査を実施する際、やみくもに多額の費用をかけて市場全体の情報を網羅的に収集しようとするのは得策ではありません。調査を通して自社の視点で把握すべきこと、またそのために使える予算規模も考慮し、対象市場のどこ(全体/部分/一点)をどのように(実施範囲、調査項目)捉えるかを入念に検討することが重要です。
この点を踏まえ、自社のねらいに応じた複数の市場調査の切り口についてご紹介します。

①市場全体を対象とした調査
市場全体の規模(売上規模、顧客数など)に加えて、市場シェア上位を占める企業と製品の概要と比較、将来的な市場全体の成長見通し、当該市場に関連した制約条件やリスクなどを広く把握するための調査です。調査対象や調査項目が多い分、調査の工数も増え、費用も高くなりますが、将来的に対象市場のシェア上位に食い込むことを目指す企業には必須となる調査です。

なお、市場調査の専門業者に上記調査を依頼すると、この①に多くの工数をかけた調査計画や見積が出されることが多いのですが、ニッチマーケットをねらう企業にとっては、①よりも後述の②・③の方がはるかに重要です。①の実施を検討する場合、自社にとっての費用対効果の見極めを十分に行われることをおすすめします。

②市場の一部を構成する、自社製品のニーズが見込まれる顧客層の調査

市場の中でも、自社製品のニーズが強く見込まれる特定の顧客層に絞った調査です。一般に、特定顧客層に限定した市場規模は大きくはないものの、その分だけ大企業が参入しづらいこともあり、ニッチマーケットを探る中小・中堅企業に適しています。特定の顧客層ならではの個別具体的なニーズや、競合他社の創意工夫の具体的内容など、①よりも狭く深い内容を把握しようとする調査です。調査の際は、顧客に直接ヒアリングすることで類似企業も含めた顧客層を把握できるのがベストですが、自社と異なる製品を共通の顧客に販売する企業なども有望なヒアリング相手となります。

③個別の顧客(企業、個人)の動向を深く掘り下げる調査

上でご紹介した①・②の調査は、対象市場の全体または一部を俯瞰して捉えるものでしたが、③では個別の顧客(企業、個人)に着目し、その動向をさらに深く掘り下げることを目的とした調査です。主に企業や個人へのヒアリング調査を通して、購買決定のプロセスや、競合他社製品と比較した特定製品購入の決め手要因、製品の認知度、購買可能な価格帯等を探ります。なお、すでに現地で事業を行っている競合他社に関しては、必ずしも競争相手としてだけでなく、何らかの形で自社と連携・協業する余地がないかも含めて調査することをおすすめします。

2.製品のバリューチェーンとマーケティングの観点での調査

前段でご紹介した各種調査は主に買い手側の視点に立ったものでしたが、製品の売り手側の視点で行う調査からも、将来的に自社の事業を現地で具体化する際に不可欠な情報が得られます。

例えば、競合他社のバリューチェーン(例えば、材料調達→製造→流通→販売など、付加価値を生む各業務とその流れ)に関する公開情報の収集や現地人材経由でのヒアリング等により、原材料のサプライヤー、部分的な製品加工等の外注先、対象国内で製品を展開する際の流通の拠点とネットワーク、製品の特殊性に対応できる物流業者、主要な販路を確立している販売店等について把握できると、自社製品の現地でのバリューチェーンを構築する際、大いに参考となります。

また、競合他社が顧客に対して実施しているマーケティング手法について、WEBサイトやSNS、各種イベント、広告媒体、企業間連携等の状況を公開情報から把握したり、現場での観察調査やアンケート調査等から、競合他社製品のブランドイメージと評価、潜在的な顧客ニーズ等を捉えたりすることで、自社のマーケティングや製品開発・改良等に活かすことも可能です。

3.市場調査から得られた情報の実践的な活用

市場調査の実施後に重要となるのが、市場調査から得られた情報の実践的な活用です。調査結果に基づいて、自社の事業計画や各種戦略、ビジネスモデル、行動計画等を策定または更新し、実践していきます。具体的には、市場のニーズに基づいた製品やサービスの改良と現地化、対象とする顧客層に適したマーケティング戦略の策定と実施、競合他社製品の分析結果も踏まえた差別化戦略や価格戦略の検討、収益性の再評価、現地進出スケジュールの更新、各種行動計画の更新と実施等が含まれます。

また、市場調査の結果はリスク管理の観点からも重要です。市場の潜在的なリスクを特定し、それに対する対策を練ることでリスクの回避または低減に努めます。さらに、市場の動向を定期的にモニタリングし、戦略を柔軟に調整することで、持続可能な成長を実現します。

さらに、現地の見込み顧客やパートナー候補企業の生の声は、市場調査時だけでなく、事業化の後も継続的に製品・サービスの改善に活かしていくことが重要です。このことが、より現地事情に合わせた製品・サービスのローカライズや、新製品展開のきっかけにもなり得ます。

次回の記事では、基本戦略その3「自社に最適な進出形態を選択する」上で、具体的な選択肢や、現地へのコミットを深める事業発展の例について解説します。


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