中小企業のブランディングとマーケティング(第3回):女性の事業承継と新しいブランド視点
こちらの記事は、海外展開に関心のある製造業の経営者や技術者の方にお伝えしたい情報です。
国内の精密機器メーカーにて10年超の海外営業経験を持つ弊社スタッフNが、中小企業のブランディングとマーケティングについて実体験を交え、様々な角度からご紹介していきます。
前回の記事では、「品質と求められるブランド力」についてご紹介しました。
今回の記事では、「女性の事業承継と新しいブランド視点」についてご紹介します。
「事業承継」と聞くと、やはり製造業が栄えた日本では、創業した父親から世襲で事業を継いだ男性(ご長男)をイメージされることが多いかもしれませんが、私はこれまで多くの女性の事業承継者に出会ってきました。
第3回目の今回は、これまで私が出会ってきた女性の事業承継者とそのブランド視点について書きたいと思います。
1. 女性が少ない業界で働くということ
私は中小製造業での営業経験が長いですが、とりわけ私の関わりの深かった機械加工業や職人による手加工業においては9割※が男性の社会です。
(ちなみに私は女性です。)
※9割が男性:営業や設計開発要員などの、事務職を含まない間接要員の割合を示しています。組立工場などでは組立や検査要員、事務職では女性も多く活躍しています。一方で、私が携わった手加工業の職人は9割が男性でした。
実際に、力仕事で私は役に立たないし、一番幅の広いハイエースに、決して傷一つ付けてはいけない一点ものの製品を隙間なく積んで長距離を移動することもありましたし(それはこなしていましたが)、女性は身体を壊すからやめた方がいいよ、とアドバイスをくれる人もいました。
女性ならではといった視点や提案、多くの業務を並行して行える点などは高く評価されましたが、やはり男性の方が適した業界だと思うことも実際多くありました。
経営者もそのような業界となるとやはり男性の方が圧倒的に多く、これまで日本の製造業を支えてこられた方々の技術・知能に加えて体力の重要性も強く感じるところです。
2. 女性による事業承継とその活躍
一方で、世襲による事業承継となると、男性(ご長男・次男や婿養子)後継者がいない場合には、女性(ご長女など)が承継することがあります。
そうした女性経営者(後継者)で現在の製造業界でも活躍される方にたくさんお会いしてきました。
最初のきっかけは今から15~6年も前の話になりますが、ある女性経営者にお話を伺うために、めっき処理会社を訪問する機会がありました。
その方は、以前は海外でメディア系のお仕事をされていましたが、お父様が亡くなられた後の経営陣の好き勝手な経営により業績の落ち込んだ事業を承継されました。
当時ご本人は、この業界に入ったことで多くのことを学び直さなければいけないという課題を抱えられながらも、「従業員を守る」という強い信念を持って、3年という短期間で事業を黒字化されました。
国内ではメディアでも紹介されるなど、経営手腕として大いに生かされたその発信力、計画実行力、そして海外生活で培われた英語力は、当時の私は同じ女性として羨ましさに似た憧れを抱いた記憶があります。
現在も、新たな事業分野に進出されるなど、新規投資もされながら確実な製造業の未来を創り続けておられます。
3. 自社の技術を生かした女性視点のブランド
このように、社長が注目されることで企業としても注目されるようになりました。
めっきも工業めっき(機能めっき)や防錆めっきだけでなく、装飾めっきというそこに美しい外観を生み出す「ビジュアル面」も一つの企業イメージとして強調され、その企業ブランドは間違いのない技術力・品質と共に根強いものになっています。
同様に、ある女性事業承継者団体では、板金加工業を承継され、その板金技術を生かして、女性が髪飾りとして使用する「かんざし」を開発、自社ブランドを立ち上げ、すでに海外進出(販売代理店開拓)も実現されている女性社長もいらっしゃいます。
また、製造業ではないですが、デザイン会社を承継されたある女性社長は、「村をつくりたい」と自社屋も含めたコミュニティスペースをつくり、さまざまな外部の利用者を招いて情報発信の場として注目されています。
女性の視点は、少し地味だと思われがちな事業に色と奥行きを加えるアイデアをたくさん持っていると言えます。
言い換えれば、そう言った色があることで、女性には入りにくかった分野・業界も再び注目され、これからの製造業が変わってくる=個性が引き立つ時代が来る、という流れがすでに始まっているということです。
番外編:自分で歩く海外 <オーストリア、ウィーン>
2019年にヨーロッパ8カ国を旅して最初に降り立ったオーストリア・ウィーンで、ホーフブルク(Hofburg)宮殿を見学しました。
素敵な宮殿と庭園、かの有名なかつてのオーストリア皇后、エリザベート(エリーザベト、愛称:シシィ)の愛用品や肖像画が展示された博物館もあります。
自由を好んだ父親に開放的な教育を受けて育った女性が、絶対権力者の姑の下でそれまでと相反した生活を送り、一方で、自身の美貌を保つためには相当の贅沢をしたともいわれています。
その時代にこれだけ強い意志を感じる女性がもしも現代に生まれていたら・・
どのような人生を選択していたのでしょう。