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チュニジア現地レポート(第21回)東アフリカ・中部アフリカへの日本企業の進出事例

 こちらの記事は、アフリカ諸国へのビジネス展開に関心がある方々にお伝えしたい情報です。
 2022年8月開催予定のアフリカ開発会議(TICAD8)開催国であるチュニジア。今回の記事では東アフリカ・中部アフリカに進出済みの日本企業に注目します。

 東アフリカ・中部アフリカの中で最も経済発展を遂げている国はケニアです。第6回TICAD開催地でもあったケニアでは、MPESAという口座を持たずに携帯電話だけで金銭をやり取りするシステムが10年以上前から構築されています。また、同国は東アフリカ最大の貿易港モンバサも有します。

 一方で、東アフリカ・中部アフリカにはケニア以外にも注目すべき国が複数あり、日本企業も進出しています。

 今回は、過去に開催されたTICADのサイドイベント等に参加した日本企業の中で、個人的に興味深かった事例を紹介します。

1. タンザニア:株式会社トロムソ(もみ殻バイオ燃料製造機、スワヒリ語圏) 

 タンザニアは、東アフリカでは珍しいスワヒリ語を公用語とする人口6000万程を有する多民族国家です。同国は社会主義体制をとる国で、隣国ケニアと比べ、教育課程でのスワヒリ語の比重が高いです。

 同国に進出した日本企業は、広島県因島に本社を置く株式会社トロムソです。同社は2019年8月横浜市開催のTICAD 7 のサイドイベントに登壇し、展示ブースにもみ殻を固形燃料に変える装置を置いています。因島は造船業で栄えた街ですが、同社は陸上での新しい活用を模索し、もみ殻固形燃料製造機“グラインドミル”、固形燃料“モミガライト”を開発しました。進出のきっかけは、JICA(国際協力機構)中国センターからの依頼で受け入れた、アフリカからの研修生の企業訪問です。ケニア人からアフリカの現地ニーズを聞き、その後タンザニアを対象国として、2013年案件化調査、2017年普及実証事業を実施しています。

 同国は、調理用の薪として森林が伐採され環境破壊が進み、その代用品として、主食の1つである米の副産物である“もみ殻”の活用が着目されました。稲作分野は、日本政府も既に1970年代からキリマンジャロ州での灌漑稲作開発に協力しており、2008年の第4回TICADでもサハラ以南の米生産の倍増が発表されていました。

 アフリカ大陸で米を食する国々は多く、同社はナイジェリア、マダガスカルにも装置を展開しているとのことです。実はチュニジアでも、ロウズジェリビ(Rouz Jerbi)と呼ばれる米食の伝統料理が食べられています。世界の米食文化圏への、同社のさらなる展開が楽しみですね。

2. ルワンダ:音羽電機工業株式会社(避雷対策製品、英語圏)

 ルワンダは人口1200万人程の小国で、独立後1994年に民族同士の大虐殺が勃発しましたが、その後、トップが強力な開発政策を実施し、2009年から公用語を旧宗主国のフランス語から英語へと切り替え、近年ではアフリカのシンガポールと呼ばれるほどICTに特化した成長を遂げています。兵庫県神戸市は、同国のイノベーション及び ICT 分野におけるパートナーシップ強化で経済交流をはかり、数多くの留学生を受け入れています。また米国の IT 企業との協力により、世界で初めてドローンを使った血液及び医療品の配達事業を実施した国でもあります。

 そんなルワンダに進出した日本企業は、国内で配電用高圧用避雷器の市場シェア約70%を持つ、音羽電機工業株式会社です。進出のきっかけは、2013年の第5回目のTICADで発表されたABEイニシアティブ(日本企業のアフリカ進出を支援する人材を育成することを目的に、アフリカ諸国の若者へ日本での修士号及び企業インターンの機会を提供)により、2014年神戸情報大学院大学からの要請で、2015年に来日したルワンダ人留学生をインターン生として受け入れたことで、同国には、雷被害で死者が出ている状況を知り、進出を検討しました。同社によれば、アフリカ大陸の中部は雷を最も受ける地域で、ルワンダでは年間60名程が雷で命を落としています。 

 同社は、2019年TICAD7のサイドイベントではアフリカ進出企業として登壇し、神戸市と共に展示ブースにサンプルを置きました。またJICA事業で、2017年に案件化調査、その後、普及・実証・ビジネス化事業を2023年まで実施中です。

 ルワンダは、チュニジアと同等の人口で、資源や消費市場としての価値は限定的ですが、人的資本に力を入れていることは、両国に共通しています。

3.コンゴ民主共和国(以下、DRC):株式会社ナンバーワンソリューションズ(ブロックチェーン技術、フランス語圏)

 DRCは中部アフリカで面積が最大の国です。かつてベルギーの植民地で、フランス語を公用語とし、レアメタル等の豊富な資源を有する国です。アフリカ大陸でアルジェリアに次ぐ国土で、約9000万人を有する多民族国家です。

 フランス語圏の国々はアフリカ西部に多いですが、中部でもコンゴ共和国や中央アフリカ共和国等は仏語圏です。またこれらの国々やDRCにはリンガラ語の話者が多く分布し、同国のリンガラ音楽は有名です。首都キンシャサは西部の沿岸に位置し、内陸部には広大な国立公園があり、アマゾンに次ぐ世界第2位の熱帯雨林には、人類に最もDNAが近いとされるボノボが生息します。

 この地には、日本勢としてブロックチェーン開発事業を展開する、株式会社ナンバーワンソリューションズが市場開拓を目指しています。同社は、前回2019年のTICAD7で来日した、同国の首都キンシャサ州知事と面会を行い、TICAD開催中にMOUを締結しています。首都キンシャサにて、2020年から廃プラスチック処理に関する現地調査とブロックチェーンを組み合わせた実証実験を開始とのことです。自社開発した地域通貨構築システム「コイニティ」を使用し、市内に廃棄物処理装置を配置し、廃プラ持参者にエコポイントを付与し、提携店舗で商品と交換が可能にする仕組みです。

 日本国内では様々な規制があり躊躇しがちな事業を、未開拓市場のアフリカ大陸で実証実験を兼ねて挑戦する企業も少なくありません。今後の展開が楽しみですね。


 今回は、東アフリカ・中部アフリカのスワヒリ語圏、英語圏、フランス語圏に進出する日本企業について紹介しました。今回紹介した地域で、チュニジアとの共通点と言えばアラビア語です。「スワヒリ」は、アラビア語では「海岸、沿岸、縁」と言った意味があります。スワヒリ語は「(東アフリカ)沿岸で話されている言葉」です。かつてこの東アフリカ沿岸地域には、アラビア半島からオマーン人が貿易船で往来しており、その影響からスワヒリ語には、アラビア語から借用された言葉が多くあります。例えば、スワヒリ語で友達は「ラフィーキRafiki」、兵士は「アスカリAskari」と言いますが、アラビア語でも同様の意味を持ちます。タンザニアの最大都市ダルエスサラームは、平和の家(ダールッサラーム)を意味します。また北東部沿岸の国ジブチは、アラビア語圏でもあり、イエメンは目と鼻の先にあるため、多くのイエメン人が同国で商売をしていますが、2015年勃発のイエメン内戦以降、祖国に戻れなくなってもいます。意外にアラブ圏との関係性があることも東アフリカ地域の特徴と言えます。

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