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BtoBビジネスの海外展開 第2章:中小・中堅建設業の海外展開(3)中小・中堅企業に適した海外展開のステップ

海外展開支援コンサルタントの杉田昌也です。
私は海外企業との直接的な取引や業務提携が必要なBtoBビジネス(日本企業~海外企業間でのビジネス)やBtoBtoCビジネス(日本企業と海外企業との取引や提携を経て海外顧客と行うビジネス)の実現をお手伝いしています。

前回の記事では、どのような建設会社に海外で成功するポテンシャルがあるのかについて解説しました。

今回は、いよいよ具体的な「進出の方法」についてお話しします。 過去の記事でも解説したとおり、海外進出には「貿易取引」「業務提携」「現地法人設立」など多様な形態があります。 しかし、「建設業」という業種においては、工場を持ってモノを売る製造業とは少し異なるアプローチが必要です。

「進出」といっても、何の手がかりも実績もない状態で現地法人を作ったり現地企業を買収したりすることはお勧めしません。私がお勧めするのは、本ブログ第1章で提唱した「情報収集から始め、現地企業との業務提携で段階的にコミットを深める」というステップを、建設業流にアレンジして実践することです。

そこで今回の記事では、以前の記事でご紹介した「最適な対象国や市場の選定」を経て特定の1カ国を選んだ後という想定の下、投資リスクを最小限に抑えながら、着実に現地に根を張るための3つのステップをご紹介します。

1.まずは現地の人材との接点をつくる

まずは現地での活動のハブになる現地人材との接点をつくります。その際、かつて自社で働き、技術だけでなく社風や社長の考え方まで理解している「帰国した外国人OB(技能実習生・特定技能修了者)」との接点があれば理想的です。また、既存の接点がない場合は、現地在住の通訳の中で、現地企業とのコーディネートや市場調査の経験もある方に、以下のような活動をサポートしてもらいましょう。

現地の市場調査・営業代行
現地人材に業務委託契約等で報酬を支払い、「現地の建設現場でどんな困りごとがあるか」「現地の建設会社が日本の建設会社に期待すること」等の調査してもらいます。また、自社のプレゼン資料等を使った現地企業へのアプローチを含めた営業代行的な業務を依頼してもよいでしょう。

自社の現地拠点としての業務
日本から母国に戻った外国人材が現地の建設会社に就職していれば、その勤務先がコンタクト先の候補になります。また、彼らに現地で引き続き自社のために働きたいという意向がある場合は、自社の駐在員を支える現地スタッフや、自社の現地営業所の幹部として動いてもらうことも一案です。

現地建設会社との業務提携のコーディネート
自社の得意分野を活かせたり補完し合える現地の建設会社との間で、業務提携を見据えた協業可能性の協議を進めます。その際、現地事情を熟知しつつ自社の視点で動ける現地人材にコーディネーターとして動いてもらうことで、提携に向けた協議や実務をより効果的・効率的に進めることができます。

2.業務提携の形で技術・ノウハウを提供する

業務提携を検討する現地企業に対して、自社からどのような技術・ノウハウをどのような形で提供するかを具体的に検討しましょう。例えば、提携先企業とのリモートでのやり取りを日常的に行いながら、技術やノウハウを提供して対価を得る、自社の人間や機材を必要な場合にスポットで提供する、などの形があり得ます。自社でできることに限定しつつ、しっかりと海外事業の一端を担える、最もリスクの低い参入形態です。

技術ライセンス供与
例えば、「日本の特殊な地盤改良技術を使いたいが、やり方が分からない」「日本企業の災害対策製品を取り扱い、施工してみたい」といったニーズを持つ現地の建設会社に対し、施工マニュアルや特許使用権を提供し、対価としてロイヤリティを受け取ります。

技術指導契約(スーパーバイザー派遣)
ライセンス供与に加え、日本から熟練の技術者をスポット(数週間〜数ヶ月)で派遣し、現地の現場で施工指導を行います。日本からリモートで技術面のフォローアップを行うことを契約に含める場合もあります。

これらの業務提携では、基本的に多額の先行投資等は不要であり、自社で取るリスクについても限定できます。また、業務提携の内容自体は包括的なものとしておき、費用を伴う業務分担等の条件は案件毎の個別契約で定めることも一案です。「まずは自社の技術が海外で通用するか試したい」というテストマーケティングの段階としても最適です。

3.個別プロジェクトでの協業実績を積み重ねる

現地の業務提携先を確保できても、いきなり自社現地法人を作ったり、法的な拘束力の強いJV(共同事業体)を組むのは時期尚早です。 まずは以下のような個別のプロジェクト単位で、業務分担の実績を積み重ねることから始めましょう。

専門業務の部分受注(リモート対応を含む)
施工そのものは現地企業が行いますが、日本側でも設計やデザイン、調達、積算といった業務の一部をリモートで請け負う形です。社内人材が英語の書類や図面等を取り扱うことに慣れる必要はあるものの、CADや3Dのソフトウェアには世界共通で使われるものも多く、機械翻訳やAIも広く普及してきているため、ハードルはそれほど高くないといえます。

単発での共同受注や資材供給
特定の小規模な案件に対し、日本から特殊な資材や機材をスポットで輸出したり、難易度の高い工程だけ日本から技術者を派遣して施工するなど、部分的な協業を行います。

共同での展示会出展
現地の建設展示会に、パートナー企業のブースの一部を借りて共同出展するのも一案です。現地の顧客の反応を直接肌で感じつつ自社でお役に立てるニーズを探れる他、パートナー企業とのより深い連携にもつながります。

こうした「小さな協業」を繰り返すことで、現地市場において自社が発揮できる役割が明確になり、業務量=売上の増加も見込めるようになります。 そのようにして「このパートナーとなら恒常的に利益が出せる」と確信できた段階で初めて、リスクとリターンを共有する本格的なJV(共同事業体)の組成や、現地法人(または支店)の設立へとステップアップすればよいのです。

いかがでしょうか。 「海外進出」=「いきなり会社を作る」「大きなリスクを取る」ではありませんし、大企業と同じことをする必要もありません。 現地人材との連携→業務提携→実務協業の拡大 という段階を踏むことで、リスクを最小限に抑えながら、着実に海外市場での地歩を固めることができます。

次回の記事では、ステップ1でも触れた外国人材の活用についてさらに深掘りした具体的な人材戦略について解説します。


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