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チュニジア現地レポート(第24回)南部アフリカへの日本企業の進出事例

 こちらの記事は、アフリカ諸国へのビジネス展開に関心がある方々にお伝えしたい情報です。

 今回注目する地域は南部アフリカです。同地域は、英語圏の諸国が多いです。例えば南アフリカは、日本企業の製造業のハブ地としての地位を確立しており、2019年に発効されたAfCFTA(アフリカ大陸自由貿圏協定)を活用した、今後需要が見込まれる電気自動車の域内展開の拠点としても注目されています。同国は、大陸で唯一のG20のメンバーでもあります。 

 一方で、南部アフリカ地域は他にも注目すべき企業が多数あります。今回は、過去に開催されたTICADのサイドイベント等に参加した企業の中で、個人的に興味深かった事例を紹介したいと思います。 

1. マラウィ:株式会社日建(蓄電式マイクロ水力、英語圏) 

 マラウィは人口2000万人ほどの縦長の国土であり、内陸に位置する国ですが、国土の5分の1を占めるマラウィ湖は、アフリカ大陸で3番目の面積を誇る湖です。国民食としても魚が食されています。

 同国の人口増加率は年平均3%であるものの、国全体の電化率は12%とサブサハラ諸国の平均値35%と比較しても低い水準で、人口増加に伴う電力不足への対応が求められています。

 そんな同国に進出したのは山梨県の株式会社日建です。同社は、2000年以降、東南アジアで地雷除去機をカンボジアやコロンビア、アンゴラ、モザンビークへも納入し、アフリカビジネスネットワーキングフェア2016では、地雷除去機の出展を実施していますが、同国への進出は、未電化地域におけるマイクロ水力と太陽光を利用した蓄電式ハイブリッド自立分散型電源システムを提案し、2016年JICAの案件化調査を実施しています。

 同社によれば、人口の8割が地方に居住しており、地方の電化率は1%という状況で、こういった電力会社の送電網と繋がっていない、オフグリット地域向けの電源を確保することにより、地方と都市部の教育格差を埋める一助となることが期待できます。

 同社は、2019年TICAD 7のサイドイベントに登壇し、その前年の2018年TICAD閣僚会合企業展示イベントにも参加しています。

 サハラ以南のアフリカの電化率は35%と低いものの、既に携帯保有率は80%と高水準です。電源システムの確保は、世界とつながるインターネットにもつながり、場所を選ばす学業や仕事の選択肢を格段に広げる上でとても重要なインフラです。

2. モザンビーク:日本原料株式会社(水のろ過装置、ポルトガル語圏) 

 南部アフリカには大陸にある5か国ポルトガル語圏のうち2か国が位置します。南西部にはサハラ以南最大規模の産油国である人口約3000万人のアンゴラが位置します。

 今回は、南東部に位置するモザンビークについて取り上げたいと思います。同国も石炭、アルミニウム、天然ガス等の資源に恵まれ、天然資源の採掘及び輸出が経済成長を牽引する人口3000万を有する国です。また国名は、アラブのスルタン Musa al biqueの名に由来します。同国近海には、生きた化石であるシーラカンスが生息しており、首都マプトの自然史博物館には日本の漁船が捕獲したシーラカンスの剝製が展示されているとのことです。

 首都マプトは南アフリカとの国境に近く、貿易港であるマプト港を有し、北部にはナカラ港を有します。港から内陸国マラウィやザンビアへの物流ルートとあるナカラ回廊は経済発展の要とされ、同回廊地域は開発重点地域でもあります。2016年の第6回TICADではアフリカの優先3地域の1つに指定されています。

 そんな同国ナカラ回廊地域に進出したのは、神奈川県の日本原料株式会社です。同社の「フォン洗浄」技術を用いて、ろ過材交換不要のろ過装置普及の販路を拡大するため、2013年には案件化調査を実施し、2019年のTICAD7ではブースを出展し、分散型の中小規模の水道システムと災害復旧活動の実績を紹介しています。進出先のニアッサ州は天然資源や農業のポテンシャルに恵まれる一方で、人口増加に伴い、給水施設の整備は進んでおらず、当初の給水率は25%でした。現在は43%まで上昇し、同州への給水事業は、他のJICA事業スキームでも進行中です。

 日本では、水道水を飲む方は減少傾向ですが、海外ではチュニジアも含め水道水は水質が悪く、飲めません。海外生活が長い方は日本の水道水が飲めることにありがたみを感じるのではないでしょうか。

3.マダガスカル:株式会社チャレナジー(風力発電機、フランス語圏)

 同国は南部アフリカで唯一のフランス語圏であり、人口2600万のインド洋に浮かぶ島国で、国民はアジア系に近い顔もしています。同国には、「星の王子様」にも登場するバオバブの木があり、世界で確認されている8種類のうち、6種類が同国に存在します。

 またアイスクリームなどに欠かせないバニラビーンズの原産地としても世界シェア第1位を誇り、日本で使用される9割以上が同国産です。さらに日本にとって最大のニッケル供給国でもあります。

 そんな同国に進出したのは、東京の株式会社チャレナジーです。同社は台風などの強風下の環境でも発電可能で、画期的な「垂直軸型マグナス式風力発電機」の実用化に世界で初めて成功しています。

 2021年からJICAの案件化調査を実施中です。2021年12月には、今年8月開催のTICAD8を見据えた、第2回日・アフリカ官民経済フォーラムのサイドイベントに登壇しています。

 同国に対する、我が国の開発計画によれば、マダガスカルの電化率は約15%に留まる一方で、電力需要が年5%で拡大しているため、国民生活・経済成長の両方に深刻な影響を与えています。 

 同社の製品は、マダガスカル政府が掲げる「新エネルギー政策」、2030年までに全世帯の70%まで電化率を上げ、電源の85%が再生可能エネルギーにするという、公共セクターの需要ともマッチしていました。


 今回は南部アフリカ諸国の日本企業について紹介しました。同地域とチュニジアは、距離も7000km(日本とチュニジアは1万km)離れているため、共通点は少ないですが、あえて挙げるとすれば、食と言語です。
 かつて、ポルトガルとスペインの位置するイベリア半島一帯には、現在のアンダルシアの地名の由来となったアルアンダルスが存在していました。ポルトガルが旧植民地にもたらした物の代表格として唐辛子、オリーブがあります。

 モザンビークは唐辛子アンゴラではオリーブを料理で用いることもあるとのことです。チュニジア人もオリーブはもちろん、辛い物好きで、ハリッサを含め唐辛子は料理に多用されています。

 ポルトガル語とスペイン語は9割方同じで、両言語には地名や歴史的建造物名にアラビア語からの単語が見受けられ、ポルトガルのアルガルヴェ地方はアラビア語でアルガルブ(the west)、スペインのアルハンブラ宮殿はアルハムラー(the red)と言った意味になります。お米のアロズ、錬金術のアルキミヤーもアラビア語と同様の意味を持ちます。

 チュニジアのアラビア語の語学学校にはスペイン人の学習者が多かったです。ポルトガル、スペイン語話者であれば、アラビア語を学ぶのが少しは楽になるかもしれません。是非アラビア語にも挑戦してみてくださいね。

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