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中小企業のブランディングとマーケティング(第2回):品質と求められるブランド力

こちらの記事は、海外展開に関心のある製造業の経営者や技術者の方にお伝えしたい情報です。

国内の精密機器メーカーにて10年超の海外営業経験を持つ弊社スタッフNが、中小企業のブランディングとマーケティングについて実体験を交え、様々な角度からご紹介していきます。

前回の記事では、「文化の違いによる新たな市場用途」についてご紹介しました。

今回の記事では、「品質と求められるブランド力」についてご紹介します。


前回(第1回)でも冒頭に書きましたが、私は過去に10年ほど国内の精密機器(機能部品)メーカーで海外営業職を担っていた時期がありました。その製品用途は主に、家庭用の定置式石油燃焼機器、燃焼バーナやヒータ、一部水用機器などです。

その燃焼に関わる重要な機能部品を設計開発から生産、検査、納品まで一貫して行っている、創立からまもなく54年を迎えるメーカーです。第2回目の今回は、その海外営業職時代に経験した、品質と海外で求められるブランド力について、実例を交えながらお伝えします。

1.日本の品質力の高さと素晴らしさ

機能性の先には必ずと言っていいほど高く長期的な「品質維持」を求められます。

家庭用燃焼機器においての機能部品の場合は、機能不具合による不完全燃焼などから発生する事故によって火災に繋がることは決してあってはなりません。

そのためにメーカーは、求められる品質(想定応力)に対して自社の安全率(許容応力の大きさ)を残して設計します。
また、品質はもちろん設計だけで保証するものではありませんので、生産との連携も外せません。
「製品寿命」によって停止すること以外は避けなければならず、品質を追求していった結果、長寿命な製品を造り上げることができます。

2.そこまで長寿命を求めていない???

そのようにして日本で多くの実績を積んで成熟した製品をアジア市場に送り込んでから、やはり色々と要求事項が増えてきます。

それまでの私たちは、日本のクライアント(ここでは完成品メーカー)の要求仕様に基づいて設計し、製品を開発してきました。
そして、それによって生まれ成熟した「標準仕様」と言えるものを展開することに成功したわけですから、これまでと同じように特別仕様を作ることにあまりメリットはありません。

そのような時に、そのアジアのクライアント(ここでは完成品メーカー)からこのようなことを言われました。

  • そこまで寿命を求めていないし、特別な仕様を作って欲しいわけではない。
  • コピーをしようと思えばできるがそれをしない。
  • 日本の高技術のその機能とブランド力を求めている

と。このブログをお読みの方はこれについてどう感じられますか?

私たちの技術をバカにしている、結局良いところだけを持っていきたいのだろう、“MADE IN JAPAN”が欲しいだけだろう、など、自社の製品・サービスに自信がある私たちほど、このように言われて不快に感じるかもしれません。

また、必ずしも日本のクライアントと同じ条件で使ってもらえるとも限りませんから、もちろんしっかりと仕様書の取り交わしはしていますが、それを超えて何にでも耐えられる製品・サービスであると誤解されることは、品質を保証する上でメーカー側としては避けなければなりません。

私も言われた時は上記のような思いが一瞬過りました。同時に、会社へ戻ってどのように報告するか、今後どのような戦略で行くべきか、そのためにはどうやって上司や技術者を説得するか悩んだことを記憶しています。

ただし、一つ誤解のないように申し上げるとすれば、このクライアントとは非常に良好な関係性を築いていましたので、これは決して脅しやバカにするものではなく、あくまでその現地の市場を熟知したクライアントの本心だと思っています。

3.相手はこちらの“ブランド”を求めていることを認識する

製品・サービスの品質についてはその使用される環境・動作条件等さまざまですからここではこれ以上言及しませんが、相手の要求を考えた場合に、私たちは何を求められているのでしょうか?

それは、つまりこちらです。

製品・サービス × ◯◯◯◯◯ × △△△△△

「× ◯◯◯◯◯」の部分、ここには、自社の「強み」や「独自性」を表します。
そして、「× △△△△△」は、その強みや独自性を「可視化・表現」して伝えることです。

つまりは、会社の “ブランド力” が必要とされるということです。

長い期間、MADE IN JAPANで通用する時代がありました。また、(機能)部品メーカーとしてのゴールは完成品メーカーであるクライアントの製品・サービスが安全にそして満足に機能する(運用される)ことでした。けれども、それだけの時代は終わりました。

自社の強みを堂々と掲げて新しいゴールを設定し、私たちそれぞれの色を決めて表現することで、製品やサービスと共にブランディングされた会社は新たな市場でのポジションを見つけることができると考えています。


番外編:自分で歩く海外<Barcelona, Spain(スペイン、バルセロナ>

2019年春にヨーロッパ8カ国を旅し、最後の8カ国目にスペインのバルセロナを訪れました。

ガウディの建築に興味があり、バルセロナでの多くの時間をその観光に費やしましたが、ご存知の通り、かの有名なサグラダ・ファミリア教会は、2019年当時はもちろん、現在(2021年)も建築中です。(2026年完成予定、写真は2019年6月)

2026年の完成も楽しみですが1882年の着工から140年近く未完成状態が続き、完成まであと4年ほどとなった今では、この「未完成サグラダ・ファミリア」という言わばまもなく“終わってしまう”ことが明確になっているこの建築物に、果てしないブランド力を感じずにいられませんでした。

これが完成したらまた一つの時代が始まると共に、「未完成サグラダ・ファミリア」はそのブランド(歴史)を閉じます。

そう思えば思うほど、完成前にもう一度訪れたい、と思うのは私だけではないかもしれません。

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