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チュニジア現地レポート(第22回)北アフリカへの日本企業の進出事例

 こちらの記事は、アフリカ諸国へのビジネス展開に関心がある方々にお伝えしたい情報です。

 今回注目する北アフリカは、今年8月にTICADが開催されるチュニジアをはじめ、エジプト、スーダン、リビア、アルジェリア、モロッコ、モーリタニアで構成されています。また、アフリカ大陸内での分類のされ方によっては、スーダン等が北アフリカに含まれる場合もあります。

 「北アフリカ」はアフリカ大陸内での国際的な呼称ですが、同地域には「マグレブ」という呼称もあります。マグレブは古代から現代までアラブ圏で使用され、アラビア語で“日が沈む方向”を意味します。アラブ世界では東西に二分され、リビアとエジプトを境に地域の名称が異なり、最西端に位置するモロッコ国もアラビア語ではマグレブ(日が沈む方向の国の意)と呼び、リビアまでの地域を指します。また、エジプトから東側のマグレブ以外のアラビア語圏はマシュリク(日が昇る方向の意)と呼びます。

 今回は、比較的企業が進出しやすい北アフリカ地域で事業を展開する日本企業について、個人的に興味深かった事例を紹介したいと思います。

1. モロッコ、モーリタニア:株式会社鳥取再資源化研究所(リサイクル、乾燥・砂漠地域での農業) 

 モロッコは人口3000万人程の国で、北部は目と鼻の先にイベリア半島に近接し、スペイン語が話される都市や、スペイン領の飛び地を有しています。同国には、およそ3種のアマジグ諸語を母語とする国民がおり、人によってはアマジグ語、アラビア語、フランス語、スペイン語、英語の5か国語を操るモロッコ人もいます。モロッコには、その立地から欧州向けの輸出地としての工場が集積しています。

 そんなモロッコに進出するのは、鳥取砂丘のある鳥取県に本社を置く鳥取再資源化研究所 です。鳥取大学は世界有数の乾燥地研究センターを有する大学です。進出のきっかけは、同大学に留学で来ていたモーリタニア人が、廃棄ガラス瓶を原料とする土壌改良材であるポーラスα(アルファ)を自国に取り入れたいという一言からでした。モーリタニアは国土の大半が乾燥地帯で、2009年に乾燥地におけるトマト・オクラ栽培の実証実験を行い、それを皮切りに、ケニア、セネガルでも自社製品の実証実験を行い、アフリカ各国政府から評判を高めていきました。

 現在はビジネスとして成立させるため、比較的経済水準の高いモロッコへ進出しています。同社は県の補助金の活用や、JICAの2013年普及・実証・ビジネス化事業を活用しモロッコへ、2017年には中南米ペルーを対象とした普及・実証・ビジネス化事業を実施しています。2016年ケニアでの第 6 回TICADのサイドイベントにも登壇しています。同社は太陽光パネルのリサイクルや微生物発電にも力を入れています。

 ※同社のアフリカ進出のきっかけとなったモーリタニアは、モロッコと合わせて日本で食されるタコ輸入の約70%を占めています。同国ではタコは悪魔の生き物として考えられ食べられておらず、そこにも日本企業の商機がありました。一方でチュニジアでは、南部の内陸トーズル県の伝統の海鮮クスクスである”イーシュ ビル ヒルバ”に、乾燥されたタコが具材として古くから使用されています。内陸でも魚介類が長期保存用に加工され食されていました。

2. スーダン:大紀産業株式会社(食品乾燥機械、アラビア語圏)

  スーダンは200以上の民族を抱える人口約4300万人の国土の大半を乾燥地域が占める他民族国家です。サヘル地域(大サハラ南部の縁)にも位置し、西部国境にはチャドをはじめとしたフランス語圏のサヘル地域の国々が広がります。
 また同国は北部をエジプト、南部には2011年に誕生したアフリカ大陸で最も若い国である南スーダンに挟まれています。

 首都の「ハルツーム」はアラビア語で“象の鼻”を意味し、アラビア語で落花生のことをフールッスーダーニー(スーダンの豆)と呼ぶほど、アラビア語と関係の深い国で、アラビア語を母語とする国民も多く、公用語として採用されています。 

 同国には古代エジプトのファラオの時代に、スーダン北部からエジプト南部に栄えたヌビア地域にはクシュ王国が存在し、メロエのピラミッドを建てる等、偉大な勢力を誇っていました。さらにウガンダの白ナイル、エチオピアの青ナイルを源流とするナイル川がスーダンを経由してエジプトまで流れています。

 この国に進出した日本企業は、岡山県岡山市に本社を置く、食品乾燥機械メーカーの大紀産業株式会社です。同社はスーダンで玉ねぎ乾燥工場を復活させるべく、JICA事業を活用し、2015年案件化調査、2017年から普及・実証・ビジネス化事業を実施中です。2018年には、TICAD 閣僚会合サイドイベントにも参加しています。

 スーダンには、アシーダと呼ばれる料理があります。チュニジア料理にもアシーダがあり、小麦粉をお餅のように調理した食べ物で、蜂蜜等を加えた白アシーダ、トマトソース等を加えた赤アシーダがあります。是非両国のアシーダを食べ比べてみてくださいね。

3.北アフリカの砂漠地域:未来機械(太陽光パネル清掃ロボット、北アフリカ~サヘル地域)

 北アフリカには大サハラが広がっていますが、近年グリーンエネルギーの重要度も増しており、日照時間の長い砂漠地域は再生エネルギー産出の場として、注目されています。

 中東の都市ドバイ等を有する湾岸諸国の砂漠地域では、北アフリカに先駆けて既に安定的なエネルギーが産出されています。

 これに関連して、今回紹介したい企業は香川県高松市に本社を置く、ソーラーパネル清掃ロボットを扱う企業です。同社は、砂漠地帯の多い北アフリカ地域と相性の良い製品を有する企業です。砂漠でのソーラーパネル設置にあたり、砂塵を除去するための装置を開発し、すでにアラブ首長国連邦での導入実績があります。

 また北アフリカ以南のサヘル地域(大サハラの南縁)の国々である、ニジェールやマリ、チャドなどは、インフラの未整備、急な政変、気候変動の影響を直接的に受ける地域でもあり、まだまだ進出市場としてはハードルが高いものの、同社の製品は極めて相性が良いです。特にアフリカ大陸は約45%が砂漠化の影響下にあるとも言われています。

 今回紹介した様々な企業による多角的なアプローチの実施で、砂漠地域における課題の解決策を打ち出すことができるのではないでしょうか。

 また、同じく北アフリカのエジプトは、東地中海や湾岸諸国にもつながる、アラブ圏マシュリクの入り口となる国です。中東市場への進出を足掛かりとして、是非エジプトからアフリカ大陸へ南下してほしいですね。すでにエジプトには国際機関のEBRD(欧州復興開発銀行)が太陽光発電プロジェクトの大規模投資を行っています。


 今回は、砂漠とアラビア語圏が広がる北アフリカ諸国について紹介しました。チュニジアが位置する北アフリカ諸国は、共通点が多々ありますが、中でも大サハラに面している国々は気候面でも、チュニジア南部と共通点があります。

また、今回紹介したモーリタニア、モロッコ、エジプト、スーダンは、各国に方言の違いはあるもののアラビア語を介して意思疎通を図ることができ、ネイティブであればどの国の方言の話者か判断することもできます。例えば、スーダン方言はエジプト南部の方言と似ており、隣国同士ほど方言が近いです。 

 アラビア語の標準語(フスハー)は書籍やニュース、TVアニメ、ゲームの字幕等で使用されますが、日常会話では話されないため、学習者にとっては、各国の方言の違いで苦戦を強いられることが多々あります。そのため学習者はフスハーよりも留学先の方言を学びがちで、どの国で学んだかをネイティブはすぐに推測できます。

 アラビア語は日本人にとって習得が難しい言語の一つであるとも言われていますが、その国の方言を一言でも知っていれば、現地の人との距離がぐっと近くなりますので是非試してみてくださいね。

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