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魅力あふれるアラブの世界(第1回)アラブ圏に含まれる国・地域

  この記事は、アラブ圏をターゲットとした商品開発や販路開拓、海外企業との協業等を検討されている、経営者や事業責任者の方にお伝えしたい情報です。
 弊社スタッフがアラブ圏での在住経験をもとに、工業・人材・食・生活・美容・宗教など、多種多様なアラブ圏の特徴と魅力を、様々な角度からご紹介していきます。

1. 古代アラブ世界で東西に区分されたマグリブ、マシュリク 

 そもそも「アラブ圏」とは、どのような国・地域を指しているのでしょうか。
アラビア語を話す人々が住むアラブ圏に厳密な定義はありませんが、世界にはおよそ20カ国が存在し、古代アラブ世界では大きくマグリブ、マシュリクに区分され、マグリブについては、以前のチュニジアブログにて、リビア、チュニジア、アルジェリア、モロッコ、モーリタニアの地域を指すことについて紹介しました。

 マシュリクは、マグリブ以外のアラブ圏を指し、エジプト、イラク、イエメン、ハリージュ(湾岸諸国)、シャームと大きく5つに区分されています。またマシュリク一帯は国際社会では「中東」とも呼ばれています。「中東」は西洋諸国による呼称で、アラブ圏だけでなく、トルコや東地中海から東方のイランやアフガニスタンなども含めた広義の呼称となっています。

 エジプト、イラク、イエメンの3か国はアラブ圏マシュリクの中では古代から独特で偉大な遺産を有していたため単体の名称で区分されています。 

エジプトは、ピラミッドやミイラ、ルクソール、ヒエログリフ等古代ファラオからの豊富な歴史を有します。

イラクは、千夜一夜物語にも登場する古代興隆の地バグダットを有し、世界でもっとも古い文学作品とされるギルガメシュ叙事詩が見つかった地として有名です。

イエメンは16世紀に、その当時、世界で最も高い泥のレンガで建てられた建物シバームがあり、コーヒー文化発祥の地としても有名です。(エチオピアは初のコーヒー生産地)

アラブ圏のアラブ連盟(Arab League)に加盟する国々

2. 湾岸諸国(クウェート、アラブ首長国連邦、バーレーン、カタール、サウジアラビア、オマーン) 

 アラブ圏マシュリク地域の1つであるハリージュ(「湾岸の」という意)は、ペルシャ湾(アラブ圏での呼称はアラビア湾)に面するクウェート、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、カタール、サウジアラビア、オマーンの6か国を指し、日本では湾岸諸国の名で通っています。湾岸諸国はこれまで化石燃料の産出と輸出が経済成長を牽引しており、日本はエネルギー貿易相手として、サウジやUAEから石油、カタールからLNG(液化天然ガス)を輸入しています。

 他方で、近年では化石燃料依存型経済からの脱却をはかり、海外の有名スポーツチーム買収、観光客誘致等の産業の多角化や、メガ太陽光発電所建設や水素製造等にみられる脱炭素政策等も推進しています。

 それ以外にも、アラブの石油王が投資主体となり、サウジ系ファンドがエンタメ分野でカプコンや任天堂株を取得しています。さらにサウジは、世界19億人のイスラム教徒にとっては一生に一度は巡礼をしたい聖地メッカを有し、近年観光客向けのビザも解禁され観光産業にも力を入れています。また、航空ハブとしての産業もあります。UAEのエミレーツ航空、エティハド航空、カタールのカタール航空などの利用で同地域をトランジットされる方も多いのではないでしょうか。UAEではコロナ禍で富裕層の受入れも実施していました。

 また、サウジアラビアでは7000年前の遺跡Hima Cultural Area 等がユネスコに世界遺産認定されています。

 湾岸諸国は、アラブ圏とイランやアフガニスタン等の西アジアや南アジアをつなぐ、イスラム教のゲートウェイとして、インド、パキスタン、アフリカ諸国からメイドやタクシー運転手やサービス業の担い手として外国人出稼ぎ労働者が流入しています。このようにイスラム教徒の集う場として地理的優位性もあり、東南アジア諸国と共にハラル認証事業も推進しています。

3.シャーム(レバント)地域(レバノン、パレスチナ、シリア、ヨルダン)

 アラブ圏マシュリクの地域の1つである東地中海に位置するレバノン、パレスチナ、シリア、ヨルダン地域は、古代アラブ世界の時代からシャーム(または大シリア)と呼ばれ、西洋諸国では「レバント」の呼称がつけられています。この地域には、キリスト教やユダヤ教の聖地もあります。

 アラブ圏=イスラム教とイメージされる方が多いですが、シャーム地域に位置する国々は、特にキリスト教徒やユダヤ教徒もいますし、シリアにはイエスが話していたとされるアラム語が現代でも話されるが存在します。パレスチナの中にはキリスト教徒もいますし、毎年クリスマスにはイエスが生まれたとされるヨルダン川西岸地区のベツレヘム(バイトュラハム)でクリスマスツリーが飾られ、観光客も訪れます。

 レバノンでは主にマロン派(キリスト教)、シーア派(イスラム教)、スンナ派(イスラム教)の3つの宗派が政治を分担していますが、レバノン人の母語はアラビア語です。さらに中東屈指の報道番組アルジャジーラのジャーナリストの中にもアラビア語を母語とするキリスト教徒のレバノン人パレスチナ人が活躍しています。

 エジプトでもコプト教徒(キリスト教)がいますし、チュニジアでは、朝のカフェでよくコーランが流れていますが、続けてレバノンの有名なキリスト教徒の歌手フェイルーズの音楽も流れてきます。彼女の歌は世代や宗派を超えて聞き継がれ、最近でもサウジアラビア人とヨルダン人により現代版がリリースされるなど、アラブ音楽が親しまれています。

 アラブ圏では、モスクだけではなく教会やシナゴーグさえも見受けることができます。シャーム地域は、各宗教の聖地でもあり、実は宗教的に多様性に満ちた地域でもあります。


 

 今回は、アラブ圏の序章となる、国・地域の概要について紹介しました。今回紹介しなかった国々では、ソマリアやエリトリアなどもアラブ圏やアラビア語圏と呼ばれることがあります。

 上述したように、アラブ圏やアラブ人に明確な定義はありません。また必ずしもアラブ圏=イスラム教徒ではないことにも注意が必要ですが、アラブ圏、アラビア語ネイティブの大多数はイスラム教を信仰しており、周辺国にもイスラム教の国家が広がり、宗教や宗派を共通項とした外交関係も築かれています。マシュリク周辺には、北方に西洋と東洋文化の境としてトルコが位置し、トルコ、シリア、イラクには国家を持たないクルド人も分布しています。イラクから東方はペルシャ絨毯で有名なイランが位置し、その先にも、イスラム教を共通項とした中央アジアや南アジアが連なっています。

 これから数回に分けて、アラブ圏、世界に広がるイスラム教を切り口に、各国の様々な特徴や魅力を紹介していきたいと思います。

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